ベトナムの移転価格税制 | 移転価格.com | 国際税務専門の税理士事務所|信成国際税理士法人
移転価格辞典
世界の移転価格税制

ベトナムの移転価格税制

法制度

  • 2005年に、移転価格税制に関する初めての包括的な規則Circular117/2005/TT-BTCが発効(施行2016年)。移転価格文書の整備や関連者取引の詳細の提出が規定されている。国内の関連者取引も移転価格取引の対象とされる。(ただし、この時点では実務上は税務当局より国内取引の移転価格を注目されるケースはまだほとんどない)
  • 2010年、Circular117に代わるものとして、Circular66/2010/TT-BTCが発効。関連会社間取引について詳細に規定。関連者の定義として、実質基準のほかに第三の企業の株を直接であれ間接であれ少なくとも20%保有している二者。売上、または仕入れの50%超を占める第三者取引先、その他借入の50%超かつ定欺資本の20%相当の融資提供企業。
    また、取引価格における修正を促す“material difference”を定義。
  • 2013年、財務局はAPAに関する規制Circular201/2013/TT-BTを発布(12月20日付、2014年2月5日施行)。
  • 2016年10月3日に、移転価格に関する法令案―関連者取引における移転価格の管理、移転価格の乱用に対する予防、そして国家予算の損害に関する規則―が公表。

移転価格算定方法

  • CUP法、RP法、CP法、PS法およびTNMMが定められている。
  • ベスト・メソッド・ルールが採用されている。

申告時の情報開示

  • 2014年1月1日以降に終了する事業年度については新しい移転価格申告書であるForm 03-7/TNDNが適用される。これにより、納税者は自ら関連者間取引が独立企業間価格かを検証することが求められ、会計上の数値と市場価格に基づき算定された数値との間に乖離が生じた場合には当該金額を申告しなくてはならない。

移転価格文書

  • 様式の定めはないが、納税者は関連者間取引について、自身と関連者に関する一般的な情報、取引内容、独立企業間価格の算定方法を同時文書化し、保存することが求められている。当局から要請を受けた場合、30日以内に提出することが必要とされている。
  • 2013年に公表された「関連者取引における移転価格の管理、移転価格の乱用に対する予防、そして国家予算の損害に関する規則」では、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の新たな要求が含まれる。
  • 2013年ドラフトでは、文書化についてより厳密になり、法人税申告時までに準備されていなくてはならない、税当局より提出の要求があればその日から営業日15日以内に提出しなくてはならない、ことが明確化された。
  • ベンチマーク分析では少なくとも連続3年分の財務データを使用する必要あり。
  • 文書使用言語はベトナム語。
  • 文書化適用除外される場合(その場合も、関連者取引に関する申告は提出しなくてはならない):
    • 納税者が、同様の法人税率が適用される国内関連者との取引のみの場合
    • 納税者の歳入は500億ベトナムドン(およそ227万USドル)を越えない、また、関連者取引の総価値が300億ベトナムドン(およそ136万USドル)を越えない。

罰則

  • ペナルティは移転価格課税に加えて課せられる。
  • Circular66では移転価格について特別な条項を設けていないが、一般的な税法の罰則規定により以下のようなペナルティを課せられる。
    遅延利息については、2015年1月以降、改定税法No.71/2014/QH13の発効により、90日以内でも、超えていても、申告漏れ部分につき、一日あたり0.05%の遅延利息。企業が誤った申告をした場合には、遅延利息に加え、過少申告税の20%を上限とする罰金が課せられる。不正、脱税のような違反の場合は、罰金は100%~300%となる。例えば、申告が90日を超える場合は脱税とみなされるほか、関連者間取引にかかわる申告をしなかった場合や移転価格文書の準備をしなかった場合にも、100%~300%の罰金の対象となる可能性がある。
  • 納税者が、税務登録をしなかった場合には、税務当局はいつでも追徴課税およびペナルティを課す権限をもっている。

挙証責任

  • 納税者側にあるとされる。

APA

  • 2014年2月よりCircular201が発効され、APAが導入。
  • ユニラテラル、バイラテラル、多国間APAが可能。最大5年間分の延長が認められる。

その他

  • 関連者間取引については、国外取引のみならず、国内取引および本支店間取引も移転価格に関する規定の対象とされる。資本関係を軸とした子会社等にとどまらず、以下のような状況で取引が行われた場合において、それらを「関連者」と認識(2016年10月法案で改定);
    1. A社が直接または間接的にB社の25%%以上の資本を所有、2. ある会社がA社及びB社の会社の資本の25%%以上の資本を有している、3. A社及びB社がある会社の資本の25%%以上を所有している、4. A社がB社の資本の10%以上を所有する筆頭が分主である、5. A社がB社の資本の20%以上且つB社の中長期ローンの60%%以上の額の保証やローンを提供している、6. B社の取締役の50%以上または、監査委員の50%以上がA社により任命された者で占められている、もしくは、A社が任命した者がB社の財務方針、事業方針に決定権を持っている、7. A社及びB社で、役員の50%以上が同一の者である、もしくは、A社B社に、同一の第三者より任命された、財務方針や経営方針の決定権を持つ役員が存在する、8. A社で人事、財務、その他事業活動の権限を持つ者、B社で先権限を持つ者が夫婦関係、親子関係、などの親族関係である、9. A社とB社が本社とPEの関係である、もしくはA社、B社が外国法人とPEの関係である、10. B社がA社の無形資産や知的財産を利用した商品の生産や販売をしており、当該無形資産や知的財産の利用料の支払いが原価以上を供給している、11. A社が直接的又は間接的に、B社の生産に使用する原材料や消耗品その他(有形固定資産の減価償却費は除く)の総価額60%以上を供給している、12. B社での1商品ベース毎での売上の60%以上を、直接的、または間接的にA社で占めている、13. A社、B社間で業務提携契約がある
  • 内部比較対象者が推奨される。
  • 相互協議(MAP)においては租税条約のネットワークはあっても、相互協議の経験はほとんどなく、二重課税の解消は困難。
  • 2016年10月ドラフトでは初めて、会社間のローンの利子や関連者間の役務提供税に係る支出に関する控除に関するガイダンスを導入した。以下のような関連者に係る控除を認めない条項が導入された;
    • ビジネス実体がなく、資産保有のための会社とみなされる
    • 15%以下の優遇された所得税率が適用される税務管轄に置かれている
    • 収益や資産に関して実体ある管理の欠如