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コラム

3.1 海外資産の運用手続きと税金

1. 利子・配当に関して発生する国内外の税金

1 利子や配当については、日本と海外の両方の税金がかかる

日本の居住者が外貨預金を行った場合や、海外の有価証券等を購入した場合、そこから発生した利子や配当などの収入に対して日本と海外の現地国の両方の税金がかかります。

日本では、国内に住所または居所を持っている人に対して全世界所得課税制度(国内外を問わず所得のすべてに課税する制度)を適用している一方、日本を含めた世界諸国では、一般に、自国に所在する財産から発生する収益に対して自国の税法をもって課税するという制度(源泉地国課税制度)を採用しているからです。

そのため、投資先の国での税制や、日本と現地国による二重課税を解消する方法を事前に知っておく必要があります。

2 利子に関して発生する国内外の税金

(1)日本の税金
日本国内で口座開設した場合には、通常の円建て預金と同様、発生した利子から20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%と住民税5%)の税金が源泉徴収され、そこで課税関係が終了します。したがって確定申告の必要がありません。一方、海外の金融機関で直接口座開設した場合、その外貨預金から発生する利子については日本の所得税は源泉徴収されません。したがって、これについては利子所得として総合課税の対象となるため、利子を受け取った日の属する年の翌年3月15日までに確定申告を行わなくてはならないことになります。

(2)海外の税金
海外の金融機関の本支店で口座開設した場合の外貨預金の利子は、現地国の法律に従って課税がなされます。課税の方法はその国によりますが、源泉徴収課税が採用されている国が多いです。また、この税率については、租税条約がある場合には、その条約に従って課税されることになります。

3 配当に関して発生する国内外の税金

(1)日本の税金
日本国内の証券会社の本支店で口座開設をした場合の外国株式(通常、上場株式のみ)の配当は、通常の日本株式と同様に、配当の受取時に20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%と住民税5%)で税金が源泉徴収されます。なお、配当については、この源泉徴収のみで確定申告を不要とする方法、申告分離課税で確定申告を行い外国税額控除の適用を受ける方法、総合課税で確定申告を行い外国税額控除の適用を受ける方法のいずれかを選択することができます。確定申告する場合には、配当を受け取った日の属する年の翌年3月15日までに申告と納税を行わなくてはなりません。

一方、海外の証券会社で直接口座開設した場合、その外国株式から発生する配当については日本の所得税は源泉徴収されません。そのため、確定申告する必要が出てきます。ただし、その外国株式が上場株式か非上場株式かによって取扱いが異なります。保有の外国株式が上場株式の場合、申告分離課税か総合課税のいずれかを選択することができます。

保有の外国株式が非上場株式の場合、総合課税のみが適用されます。

(2)海外の税金
保有外国株式の配当については現地国でも課税されます。課税方法は国によって異なりますが、源泉徴収方式で課税することが一般的です。課税の有無や方法については、国や株式の種類によって異なるので、現地国の税法を調べる必要があります。

4 二重課税の解消_租税条約や外国税額控除を活用しよう

利子についても配当についても、海外に投資をした場合には、通常日本と海外の両方から課税されます。これを「二重課税」と言います。二重課税の状態は、グローバルな投資の妨げになることから、現在、世界的に租税条約や外国税額控除という形で解消する措置がなされています。

租税条約は、二国間以上の国同士の租税に関する取り決めです。日本に住みながら海外投資をした場合、その地での一定の手続きを踏めば、その地では非居住者であることが認められ、税率が低くなることがあります。また、租税条約がある場合でもない場合でも場合には、外国税額控除という制度を用いて二重課税部分を申告書上解消することができます。

2. 租税回避目的の海外移住を止める動き_出国税の創設

1 創設の目的と概要

平成27年度の税制改正で、国外転出時課税制度、いわゆる「出国税」の制度が創設されました。これは平成27年7月1日以降、国外に住所や居所を移す人が、その転出時において時価総額1億円以上の有価証券等を持っている場合には、売却する予定があるかどうかに関係なく、転出時にその有価証券等(債券やデリバティブを含む)を売却したものとみなし、その差益部分(キャピタルゲイン)について所得税を課するというものです。

近年、ヒト・モノ・カネの国境を越える移動が活発になり、それに伴い、資産をもったまま低税率国などに移住する人も増加しました。資産のうち、特に有価証券等については、オンライン上の取引が当たり前となった今、実体がないものが大半であるため、日本の税務当局が把握に困難な一面があります。なおかつ、いったん移住されると、もう日本の税法の対象範囲外です。そのため、出国する直前に課税をして税金逃れを防ぐという制度を設けたのです。

とはいえ、1億円以上の有価証券等のみなし売却益に課税するとなると、税額も高額が見込まれること、更には税金逃れ目的ではない出張や留学など、この制度が本来課税目的としていない人たちまで課税対象となってしまうことから、納税の猶予などの宥恕規定(緩和規定)も設けられています。

2 出国しなくても課税対象になる?非居住者への相続や贈与に要注意

この国外転出時課税制度の対象となるのは、資産を保有している本人だけではありません。この制度の課税対象となりうる居住者から非居住者に対し、贈与あるいは相続という形で有価証券等の全部または一部が移転した場合でも、この制度の対象となります。そのため、海外居住者が有価証券等を相続や贈与でもらい受けた場合には注意が必要です。

3 不動産の運用に必要な手続き_賃貸収入

以前から根強いハワイ人気や新興国の活況を見据えて、投資対象を海外不動産にする方も少なくありません。ただし、不動産投資するのは預貯金や有価証券ほど簡単ではなく、日本と同様、一定の手続きを踏む必要があります。

ハワイを例にとれば、日本の居住者に対してハワイの物件の家賃収入を支払うとき、連邦税30%が源泉徴収されます。これを防ぐため、連邦税とハワイ州税の納税者番号を取得したり、「Form W8-BEN」という非居住者が低税率の適用を受けるための書面を提出する必要があります。更に、ローンを組む場合、非居住者のローンを取り扱う現地銀行が少ないことや、審査そのものに時間がかかることから、物件の契約前に余裕をもってローンの準備をしなくてはなりません。

また諸外国によっては、こういった事情が大きく異なります。そのため、お金を実際に動かす前に、入念な下調べが欠かせません。

3. 賃貸収入に関して発生する国内外の税金

海外不動産の賃貸収入についても、外貨預金や外国の有価証券等と同様、日本と海外の両方の税金がかかることが通常です。

日本においては、賃貸収入については不動産所得として毎年3月15日までに確定申告をしなくてはなりません。

海外については、不動産が所在する現地国の税法に従います。たとえば、ハワイならば、不動産の評価額に応じた固定資産税、ハワイ州消費税及びホテル税、そして賃貸収入に関する所得税がかかります。

なお、日本と海外の二重課税部分については、租税条約や外国税額控除により解消することができます。