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中国、税金逃れ対策奏功、12年5710億円増収 法制度整備、7年で74倍に拡大

中国の国家税務総局はこのほど、租税回避対策を踏まえた2012年の増収額が346億元(約5710億円)に達したことを明らかにした。

◆平均追徴額が増加

米国の政治家、ベンジャミン・フランクリンが「この世で避けて通れないものの一つ」として挙げた税金。しかし実際には、節税対策やタックスヘイブン(租税回避地)などを使った税金逃れは後を絶たない。

もちろん脱税と異なり、租税回避行為は違法ではない。しかし、納税者が講じる租税負担軽減・排除のための手法は、もはや法形式を無視したもので、これは国の税収減を引き起こすだけでなく、市場の公正な競争環境を悪化させる。

このため、各国ともさまざまな形でこれらの“抜け穴”をふさぐ措置を講じている。

中国では改革開放直後に租税回避対策がスタート。その後、08年に施行した企業所得税法で移転価格税制や事前確認制度、過少資本税制や外資企業の管理関連の規定を設け、中国では初めて包括的な租税回避防止規定が制定された。

この結果、第11次5カ年計画(06~10年)期間中、租税回避対策による個別案件の平均追徴額は383万6200元から1461万5400元に増加。追徴額が1000万元を超えた案件は155件に達し、1億元を超えた案件も12件となった。

租税回避行為対策による増収額は10年に102億7200万元、11年には239億元に拡大。さらに今回、12年の増収額は346億元に達したが、これは05年のおよそ74倍。つまり7年間で年平均85%増加した計算になる。

さらに昨年は、国際的二重課税の還付額も64億元まで増えるなど、中国の租税回避関連対策は効果を上げている。

中国社会科学院財経戦略研究院の研究員、楊志勇氏が指摘するとおり、中国の租税回避防止策が「世界的に見てもかなり進んでいる」ことの証しといえるだろう。

英国のトランスファー・プリンシング・ウィークが発表した移転価格税制を施行している国別ランキングで、07年に8位だった中国が、10年には日本、インドに次ぐ第3位となったことからも、そのことがうかがえる。

◆各国と情報交換

とはいえ、租税回避行為対策はもろ刃の剣だ。規制をしなければ、企業は租税回避に走り、税収減を招く。しかし行き過ぎた規制は外資企業の投資を鈍化させ、経済成長の足かせにもなりかねない。いかに、合理的な徴税を行いつつ、投資や経済成長を維持するか。重要なのはそのバランスなのである。

そして、そのために重要となってくるのが「各国との情報交換だ」(楊氏)。税制の異なる国がある限りなくならない租税回避行為。その抑制には、長期的かつ恒常的な対策が必要で、それを一国だけで行うのは容易ではないからだ。

加えて、法の整備や専門性の高い人材の育成、効果的な情報収集や情報交換などを不断に行なっていかなければ、租税回避行為を阻止し、財源の流出を食い止めることはできない。

法制度の整備が進み、租税回避行為が難しくなってきた中国。今後も継続的な取り組みが欠かせない。
(出所:産経新聞、中国青年報=中国新聞社)