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デンソー追徴取り消し 12億円、名古屋地裁判決

自動車部品大手のデンソー(愛知県刈谷市)が海外子会社の所得を巡り、約12億円の追徴課税処分の取り消しを求めた訴訟の判決が4日、名古屋地裁であった。福井章代裁判長はデンソーの請求をほぼ認めた上で、約12億円の追徴課税処分を取り消した。

名古屋国税局はデンソーに対し、2009年3月期までの2年間で約114億円の申告漏れを指摘し、約12億円を追徴課税した。シンガポールの子会社の所得が、デンソーの所得と認定された。

デンソーによると、訴訟では海外に所得を移転して、税負担を軽減するタックスヘイブン(租税回避地)の対策税制が適用されるかどうかが争点だった。海外子会社に事業の運営実態があれば、適用除外となる。

デンソーによると、判決はシンガポールの子会社の海外事業に実態があると認定。対策税制の適用から除外され、デンソーへの追徴課税処分が取り消されたとみられる。

判決は当事者の申し出で閲覧が制限されており、詳しい判決内容は明らかになっていない。

デンソーは全額納付する一方で、課税処分を不服として、取り消しを求め、名古屋地裁に提訴。訴訟でデンソーは「社員が70人ほどおり、物流と財務の統括機能がある」などと主張した。これに対し、名古屋国税局は、デンソーのシンガポール子会社は出資先企業から配当を受けるのが主な業務で、事業としての実態はなく、対策税制の課税対象になると反論していた。

デンソーのシンガポールの子会社を巡っては、同国税局が11年3月期までの2年間で約138億円の申告漏れを指摘し、約61億円を追徴課税した。デンソーはこの処分を巡っても提訴しており、今回の司法判断はこの裁判にも影響しそうだ。

デンソー広報部は「適用除外要件を満たすという当社の請求は認容されたが、取り消し請求金額の一部は棄却された。判決内容を精査して対応していく」とコメント。名古屋国税局は「判決内容を検討し、関係機関とも協議したうえで、今後の対応を決めていきたい」としている。
(出所:日経新聞)