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各国移転価格NEWS~シンガポール~

シンガポールでは2016年10月10日に、CbCレポートに関するe-Taxガイドラインが内国歳入庁(IRAS)により公表されました。そこでは、シンガポールを拠点とした究極の親会社による多国籍企業のグローバル事業のグループの利益に関する情報をまとめることが要求されています。これは、OECDのBEPSプロジェクトの包括的枠組みに沿ったものとなっています。
シンガポールでは、2006年2月に移転価格に関するガイドラインが公表され、今日の移転価格に関するガイドラインの端緒となっています。その後、移転価格調査に関連する移転価格コンサルテーションの公表(2008年7月)、事前確認制度(APA)に関するガイドラインの公表(2008年10月)、関連者間ローン及び役務提供取引に係るガイドライン発行(2009年2月)と、移転価格に関しての法整備が急速に整っていきました。2015年1月にIRASは、これまで個別に出されてきたガイドラインを統合した包括的移転価格ガイドライを公表し、OOECDを中心とした世界的流れに協調路線を取り入れることを表明しました。翌年2016年にはCbC報告書の施行、続いて今回e-Taxガイドラインの公表となりました。
さて、今回公表されたガイドラインではCbC報告書が要求される該当MNEについて以下のように明確化されています。

  • MNEグループの究極の親会社はシンガポールに所在する
  • 前事業年度の連結グループの歳入が少なくとも、11億2、500万SGD以上である
  • MNEグループは一つ以上の外国管轄に子会社を持っているか、事業をおこなっている

シンガポールの事業体が究極の親会社ではない場合、もし、その親会社が本国でCbCレポートを作成する義務を課せられている場合、CbC報告書の作成は要求されません。しかしながら、シンガポールの会社も、要求された情報を親会社に提供することによって、CbC報告書の作成に関与することになるでしょう。上記当てはまるシンガポールのMNEグループは、2017年1月以降に始まる事業年度の終わりから12か月以内にCbCレポートを提出しなくてはなりません。
また、ガイドラインにおいてCbC報告書のガイドラインには新しく定められたCbC報告書作成のためのフォーマットが示されています。これは、OECDによるフォーマットと一致しており、表1: グループの収入、税金、社員数、資産の概観、表2:グループ内企業の概観、表3:その他関係ある追加情報、の3種の図表から成っています。
その他ガイドラインでは、主要概念やことばの定義の明確化、テンプレートを完全にするための手引き等について述べられ、同時に、CbC報告書は、納税者の移転価格文書を補完するためのものであり、移転価格文書の代用にはならないことが強調されています。
このようにCbC報告作成の整備がなされるなかで、該当者でありながらCbC報告書を提出しない納税者は、シンガポールの所得税法に基づき、1,000SGD以下の罰金または6ヶ月以下の懲役等のペナルティが課せられることに気を付けなければなりません。