各国移転価格NEWS~ヴェトナム~【1】
ヴェトナム財務省は、2016年10月3日にBEPSの奨励する移転価格を採用し、施行することを意図した移転価格に関する法令案―関連者取引における移転価格の管理、移転価格の乱用に対する予防、そして国家予算の損害に関する規則―を公表しました。同ドラフトは2016年度内に承認され、2017年には施行を予定されています。
移転価格に関する法規制に関してヴェトナムでは、2005年に移転価格税制に関する初めての包括的な規則Circular117/2005/TT-BTCが発効(施行2016年)され、移転価格文書の整備がなされ、関連者取引の詳細に係る文書の提出が規定されました。これにとって代わるものとして、2010年にCircular66/2010/TT-BTCが発効され、2013年には、財務局よりAPAに関する規制Circular201/2013/TT-BTが発布され(2014年2月5日施行)、移転価格に係る法整備が進められてきました。
さて、10月3日に公表されたドラフトでは、移転価格に関するたくさんの新しい指針が導入されています。「形式より実体」を基準とし、独立企業間取引に対する関連者取引の比較可能性の測定、無形資産に係るDEMPE(開発、改良、維持、保護、活用)機能の考慮、さらには、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の新たな要求が含まれています。この文書化要求に関してドラフトでは、現規則よりもより明確に、厳密なものとなっています。ドラフトでは、法人税申告時までに文書が準備されていなくてはならない、税当局より提出の要求があればその日から営業日15日以内に提出しなくてはならない、ことが明確にされています。納税者が文書を提出しない場合の追徴課税等のペナルティも明確化されています。また、文書化適用除外に関しては(その場合も、関連者取引に関する申告は提出しなくてはなりません)、納税者が、同様の法人税率が適用される国内関連者との取引のみの場合(いずれも租税措置はとられない)、納税者の歳入は500億ベトナムドンを越えない、また、関連者取引の総価値が300億ベトナムドンを越えない、場合に文書化の提出が免除されることが明確化されました。
さらに、今回のドラフトでは初めて、会社間のローンの利子や、関連者間の役務提供税に係る支出に係る控除に関する手引きが導入されています。すなわち、1. ビジネス実体がなく、資産保有のための会社とみなされる、2. 15%以下の優遇された所得税率が適用される税務管轄に置かれている、3. 収益や資産に関して実体ある管理が欠如している、4. 収益や資産に関して実体ある管理が欠如している、このような関連者に係る控除を認めない条項が導入されました。加えて、「関連者」を定義する関係が見直されました。例えば、所有権の基準が一方の資本の、以前は20%で「関連者」とみなされていましたが、今回、25%以上を保有するよう改正されました。また、以前は、A社がB社の生産に使用する原材料や消耗品の総価額の50%を有し、また、A社の事業年度の総売り上げの以上をB社が占めている場合に「関連者」としてみなされましたが、今回のドラフトで、いずれも総価額の60%、総売り上げの60%と改められました。