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各国移転価格NEWS~インドネシア~【1】

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インドネシアでは、インドネシア財務省より2016年12月30日付けで、移転価格文書に関連する新たな要請事項である財務省規定第213号(PMK-213)が発効されました。同規定により、関連者間取引を行う納税者にはマスター・ファイル、ローカル・ファイルおよび国別報告書を準備することが新たに要請されることになります。これらはOECDのBEPS最終報告書の行動計画13の内容と一致しています。
インドネシアの移転価格税制に係る法整備を概観すると、1983年に所得税法18条で移転価格税制が規定され(1991年、1994年、2000年の所得税法及び2008年のNo.36所得税法にて修正)、2010年にNo.PER43/PJ/2010(PER-43)として移転価格規制が発布されました。同規制には関連会社間価格、比較可能性分析、移転価格算定方法の選択、独立企業間価格の決定、移転価格制度の文書化のフォーマットなどが含まれています。翌年に改定され、2013年には移転価格調査ガイドライン(PER22/PJ/2013)が発布(7月1日より発効)され、その後2013年に、さらなる細則を定めたSE-50/PJ/2013が発布されました。その間に事前協議(APA)や相互協議(MPA)のガイドラインも整ってきました。
今回発効されたPMK-213は、インドネシアにおける移転価格を取り巻く法整備が進むなかでOECDの基準に沿って定められた内容となっています。新規定では、移転価格文書作成に関してマスター・ファイル、ローカル・ファイルと国別報告書の3層のアプローチを導入しています。マスター・ファイル及びローカル・ファイルに関しては、関連者取引を行う納税者が前年の総所得額が500億IDR以上、また、前年の有形資産取引額が200億IDR以上、あるいは前年のサービス、ロイヤリティ、利息、その他の取引額が50億IDRを超えるか、インドネシアの法人税率(25%)よりも低い税率が設定されている国に所在する関連者と取引をおこなっている場合、これらのいずれかにあてはまる場合には文書の準備が要求されます。また、納税者が親会社となる場合、当期の連結ベースでの総所得が11兆IDR以上の場合にも移転価格文書の準備が求められます。マスター/ローカル・ファイルの準備は事業年度の末日より4か月以内に提出の準備をおこなわなければなりません。また、年次法人税申告書(CITR)や次年度の納税時申告書時に提出する国別報告書の添付書類のなかでこれらについての要約が記されていなければならず、同時に、マスター/ローカル・ファイルには最低限要請されている事項が開示されていること、両ファイルの作成日が記載されていることを納税者が宣言することが求められます。
国別報告書に関しては、グループ会社の親会社に該当し、当期の連結ベースでの総所得が11兆ルピア以上の納税者は国別報告書の作成・提出が求められます。親会社が国外に所在する場合、あるいは親会社の所在国における状況がインドネシアとの間で情報交換に関する協定がない場合、あるいは協定が存在しても国別報告書をインドネシア政府が入手できない場合には、インドネシア納税者に国別報告書の提出義務があるとされます。国別報告書は、事業年度末から12か月以内で準備をし、翌事業年度法人税申告書とともに提出することが求められます。
上記3種類の書類の言語は原則としてインドネシア語を使用することが求められています。例外として英語が認められる場合もありますが(ルピア以外の通貨による記帳及び英文での記帳が認められている納税者)、インドネシア語訳を求められます。
ペナルティは既存の規則に従いますが、納税者がマスター/ローカル・ファイルを法人税申告書の提出時に作成していなかった場合には、その法人税申告書が不完全であるとされる可能性があります。法人税申告書が不完全とされた場合には、未払税金の最大200%をペナルティとして国税総局が徴収するとともに刑事制裁を受けるリスクがあるでしょう。