各国移転価格NEWS~マレーシア~
マレーシアでは、2017年1月1日より年次国別報告書の最終規則が実施されることになりました。同規則はマレーシアに親会社のある多国籍企業で、国別報告事業年度の前年の事業年度の連結グループ収益が30億RMを超える場合に適用されることになります。たとえば、2017年12月31日が事業年度最終日にあたる多国籍企業にとって、2016年12月31日までの連結総収益が30億RMを超えるかが適用基準となります。報告する企業は究極の親会社であるか、場合によっては代理の持株会社、つまり、親会社に任命され、所在地がマレーシアである企業でもよいとされています。
ここでマレーシアの移転価格税制を概観してみると、租税回避防止規定でもある1967年の所得税法第140条の包括租税回避行為否認規定及び第82条の記録保存に係る条項に規定されていましたが、そこでは移転価格文書の作成義務などは課されていませんでした。2003年7月2日にマレーシア内国歳入庁(MIRB)は、OECD移転価格ガイドラインに準拠したマレーシア移転価格ガイドラインを公表し、移転価格税制の執行手続きを明確化しました。同ガイドラインでは、1) 独立企業価格の定義、2) 関連者の定義、3) 比較可能性の検討要素、4) 独立企業間価格算定方法、5) グループ内役務提供取引の取扱い、6) 文書化等について規定を置いています。このガイドラインを具体的に執行するために、2009年1月には所得税法に移転価格税制を規定した140A条項が制定され、制度の整備がすすめられました。そうした中で、2012年にIRBMは移転価格税制の執行上の具体的な指針を明確にすることを目的として2003年の移転価格ガイドラインの改訂版を発行しました。同時に事前確認(APA)に関する新ガイドラインの2つを同時に発表しています。
この2012年の改訂移転移価格ガイドラインで初めて転価格文書作成義務規定しました。同時文書の作成が毎年求められ、その内容は、a) 組織概要(グループ間資本関係図を含む)、b) グループ各社の財務内容、c) 事業内容/業界・市場の動向、d) 関連者取引の概要、e) 価格移転方針、f) 価格設定方針に影響する前提条件等、g) 比較対象性/機能リスク分析、h) 移転価格算定方法の選定、i) 選定された移転価格算定方法の適用、j) 関連するAPAのリスト、k) その他移転価格分析に用いられた情報等、です。組織概要と財務内容のみについて記載した短縮版文書の作成も認められています。納税者は税務申告書と同時に移転価格文書を提出する義務はありませんが、納税提出の期限までに準備をしていなくてはなりません。MIRBから文書の提出を要求された場合は、納税者は30日以内に提出しなくてはなりません。納税期限は事業年度終了から7か月で、アセスメント2014では、納税時に移転価格文書の準備をしているかどうか申告することが義務付けられています。文書の作成言語はマレーシア語または英語であることが求められます。
このようにマレーシアでは今日移転価格の議論が高まっており、OECDのガイドラインと合わせ国別報告書の作成を義務付けた他、さらに国とのを交換する準備をもすすめています。