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各国移転価格NEWS~ベルギー~

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ベルギーは欧州中心部に位置し、EUや北大西洋条約機構(NATO)をはじめとした国際機関の拠点であり、優れた投資環境や整ったビジネス・インフラを求めて世界中からグローバル企業が進出しています。また、OECDの創設メンバーでもあったベルギーでは、早くからOECDの移転価格規制に沿った法整備が進められ、移転価格文書化に関しても、BEPS行動計画13に沿って導入されています。今回はヨーロッパ経済の中心的な位置をになうベルギーで、どのように移転価格文書化が導入されてきたのかをみてみましょう。

ベルギーでは、2016年7月に、ベルリン税法の新条項(321/1-321/7)として、BEPS行動計画13に基づいた移転価格文書化ルールを導入しました。同年12月には新ベルギー移転価格規制導入に関する追加の詳細が公表され、報告すべき事項が明確になり、また提出すべき報告書のテンプレートも示されました。移転価格文書化の3層構造の導入により、下記について明確に示されました。

1 マスターファイル/ローカルファイル

提出義務がある多国籍企業については、
①会計年度の事業収入と財務収入との合計が5,000万ユーロを超える場合、
②総資産が10億ユーロを超える場合、
③年平均100人を超えるフルタイム換算の従業員を持つ場合、
と定義されています。
マスターファイルでは、納税者はグループの組織構造の詳細、事業活動、無形資産、財務状況と税務ポジションを報告することが求められます。
一方、ローカルファイルは、2つのフォームから構成されています。一つは、一般情報を記載したフォームで、ベルギーにおける事業活動の概要を記載します。添付書類として移転価格スタディ、フレームワークの同意書、移転価格算定方法、組織構造の詳細を添付することが可能です。もう一つは、事業単位ごとの詳細情報を記したフォームです。こちらには、関連者間と第三者間との取引に関する営業利益を含む直近3年間の財務情報の詳細、関連者間取引のリストと商品、サービス、無形資産と利息の受払額、事業単位や取引ごとの移転価格算方法や移転価格スタディの開示が求められます。
マスターファイルもローカルファイルも政令で定められた所定フォームで提出する必要があります。提出期限については、マスターファイルは多国籍グループの税務申告後12か月以内に、ローカルファイルは税務申告とともにベルギー税務当局に提出しなくてはなりません。ベルギーのグループ企業のビジネス・ユニットが、前事業年度で合計100万ユーロを超える国外・国内取引を行っている場合、比較分析を含む追加文書は、ローカルファイルで提出されなくてはなりません。マスターファイル、ローカルファイルとも英語での提出が求められます。

2 国別報告書

連結グループ収入が7億5,000万ユーロを超える企業は、国別報告書をベルギーの税当局に提出しなくてはなりません。期限は会計年度終了から12か月以内です。ただし、ベルギー以外の国に所在する親会社が、所在国で国別報告書を提出する場合には、ベルギー法人による提出は不要になります。その場合、ベルギー法人は国別報告書を提出する親会社の名称、所在国、ベルギーにおける恒久的施設(PE)等を、事業年度終了日までに届ける必要があります(通知義務)。あるいは、グループ内に代理親会社が設定されれば、親会社に代わって国別報告書の提出が可能となりますが、その場合にも事前に、ベルギーの税務当局に通知義務があります。
移転価格文書の提出は、ベルギー当局のプラットフォームであるMyMinfinProにおいて、XML形式により提出する必要があります。提出言語は英語です。

3 適用と罰則

ベルギーにおいて新移転価格税法は、2016年1月1日以降に始まる会計年度に対し適用されます(ただし、最初の提出期限は2018年3月まで延期されました)。移転価格文書化要求を遵守しなかった場合には、初回は1,250ユーロから、2回目以降は25,000ユーロの罰金が課される場合があります。

このように2016年に導入されたベルギーの移転価格ルールは、今日までOECDの方針に沿ったかたちで移転価格制度が整備されてきました。現在は、OECDの2017年度改定版に合わせて整備されてきています。ただし、その一方で、2018年11月にベルギーの税務局により公表された通達案では、ベルギーの移転価格制度の詳細決定において、ベルギーの独自の方針で進められている箇所もあるため注意すべきしょう(例えば、移転価格算定方法など)。
いずれにせよ、国際的経済活動の中心地であるベルギーにとり、脱税に対する取り組みは重要な責務と考えられています。今後もOECDの方針に沿いつつも、独自に法整備が進められていくでしょうから、注視しておく必要があるといえるでしょう。