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各国移転価格NEWS~Panama~

数年前に「パナマ文書」が国際社会を揺るがすと、「タックスヘイブン」(租税回避地)としてパナマは、国際社会から情報を共有する合意を守っていないと批判され、税務の透明性および租税回避に対応する国際基準の順守を求められてきました。

今回は、パナマでは、移転価格税制をどのように取り入れ、OECDの多国籍企業による税源浸食及び利益移転(BEPS)を中心とした国際課税ルールに寄り添っていったのかをみていきます。

パナマでは、2010年に議会で移転価格税制を導入することを承認しました。この時点では、同税制が適応されるのはヴァルボア、メキシコ、スペインなど、パナマと租税条約を結んでいる国に限られていましたが、2012年には改正法が公表され、国外関連取引のある国がすべて対象となりました。また、移転価格文書を提出することが義務付けられ、そのためのフォーマットForm930が公表されました。事業年度2011年分より対象となりました。締め切りは、2012年9月30日と定められました(延長有)。同改正法は、ペナルティについても定め、移転価格文書を提出しない、あるいは提出書類に不備があった場合、全体の取引価格の1%を支払う罰則を規定します。

2018年になると、移転価格情報の提出用フォーマットForm930が更新され、OECDで定める国際基準に沿ったかたちで移転価格文書を作成する、新しいフォーマットF930 V.2が公表されました(パナマ法52条項762-1)。新フォーマットF930 V.2は、旧フォーマットに比べて多くの情報を納税者に要求したものとなっています。F930 V.2で要求される内容は、以下のとおりです。

  • 移転価格分析を行うために選択された比較対象会社についての、詳細な事業状況および財務情報
  • 無形資産を含む取引に関する詳細な情報
  • 適用された独立企業間調整
  • 適用された差異調整
  • 国際的に議論されている移転価格に関する情報
  • 多国籍企業における連結収益

移転価格報告書としてF930 V.2を提出することに加えて、パナマ政府は、OECDの提唱するマスターファイルとローカルファイルに相当する、移転価格の同時文書を作成することを義務付けています。

パナマでは、こうして次第に国際基準に沿った税制度が整備されつつあります。2019年5月、OECDの進めるBEPS行動計画13の推奨する、国別報告書の法的枠組みが、パナマの経済・財務省により公表されました。法令No.46 のもとで、前事業年度の連結収入が7憶5,000€か、パナマのバルモア通貨同等額を超える多国籍企業グループの親会社、あるいは、パナマに税務上の目的で拠点を置く企業に対して、国別報告書の提出が義務付けられました。これらの報告義務のある企業は、事業年度2018年度の国別報告書に対して、事業年度の終了から12か月以内にパナマ税務局によってつくられたガイドライン( Direccion General de Ingresos—DGI)に従い、“XMLスキーマ”を使って提出しなくてはなりません。

加えて、究極の親会社がパナマ国内ではなく、海外にある外国の多国籍企業に属するパナマの企業は、国別報告書を提出する企業の税務上の居住地と身元証明を記す届出をDGIに提出しなくてはなりません。詳細な手続きについては近々、DGIによって発表されるでしょう。法令では、移転価格の調整のために、提出された国別報告書の内容を利用するかどうかは、いまのところ定かではありません。DGIは、移転価格のリスク評価、経済・統計的分析のためにのみ、国別報告書の情報を利用する権限を与えられています。

その後、国別報告書の提出に際しても整備が整ってきました。パナマでは、国別報告書のポータルサイトが、国別報告書の提出や通知のために利用可能となりました。2019年5月の政令は、納税者に、該当する年度の国別報告書の提出及び国別報告書の提出を要する多国籍企業グループかどうかの届出をパナマ税務当局にするよう義務づけることを発表しましたた。2019年12月後半に発表されたResolution No.201-9117では、国別報告書を提出する企業の通知の手続に関するガイダンスが明示されました。一般に、届出はオンラインのポータルサイトで行うよう指導されています。届出は最初の年度だけでよいのですが、その後、届出時の情報が変わった場合には、更新情報を提出しなくてはなりません。提出の際の言語は、スペイン語でなくてはならいことも明記されました。同年12月に引き続きResolution No.201-9116が公表され、2018年事業年度分の国別報告書の提出は2020年1月31日まで延長することが公表されました。さらに、2020年1月30日発行のガゼットで、法令No.201-1035により、2018年事業年度に対する国別報告書の提出期限は、2020年2月15日までと、さらに延長することを認めることが公表されました。こうした国別報告書の届出や提出は、すべて国別報告書のポータルサイトを利用することが義務付けられています

このように、パナマをとりまく移転価格税制は確実に整備されてきています。BEPS行動計画13のマスターファイルやローカルファイルについても、三層構造からなる移転価格文書の観点から整備されていくものると思われます。