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国税庁が、移転価格の通達(租税特別措置法)の趣旨解説(追加分)を公表しました

国税庁は、7月8日、移転価格の通達(租税特別措置法)の趣旨解説(追加分)を公表しました。内容は、以下のとおりです。

■第66条の4《国外関連者との取引に係る課税の特例》関係
【新設】66の4(7)-1(準ずるものの例示)
【新設】66の4(7)-2(合理的と認められる割引率)
【新設】66の4(8)-2(無形資産の例示)
【新設】66の4(9)-1(固有の特性を有し、かつ、高い付加価値を創出するために使用されるもの)
【新設】66の4(9)-2(予測利益の金額を基礎として算定するもの)
【新設】66の4(9)-3(著しく不確実な要素を有していると認められるものかどうかの判定)
【新設】66の4(9)-4(災害に類するものの例示)

サイトはこちら☞ https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/200708/index.htm

今回の趣旨解説は、令和元年(2019)度税制改正によって新設された「無形資産」に関するものです。以下、若干の当方の解説を付します。

改正の全般的な背景については、「5 第66条の4《国外関連者との取引に係る課税の特例》関係」で概説されています。

【新設】66の4(7)-1(準ずるものの例示)

移転価格算定方法として新たに設けられたディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法についてです。当該方法を、「準ずるもの」に加えるとともに、棚卸取引以外の、例えば、無形資産取引についても、「同等の方法」あるいは「準ずる方法と同等の方法」として扱う旨を明記しています。

【新設】66の4(7)-2(合理的と認められる割引率)

DCF法で用いる割引率をどのように捉えればよいかを詳述しています。また、リスクとの兼ね合いについても触れています。

なお、外国法人等の内部取引や連結においても、同様に扱う旨が明記されています。

【新設】66の4(8)-2(無形資産の例示)

従来の無形資産の定義で用いていたものはそのまま引き該当する旨を示し(⑵)、他には、OECD移転価格ガイドライン(ガイドライン)に沿ったかたちで、無形資産の定義を行っています。

そのため、ガイドラインにおいて、グループシナジーや市場固有の特徴については、無形資産としない扱いとしたことから、わが国においても、無形資産に該当しないことを明示しています(「4」)。

参考:移転価格.comニュース
「最新「OECD移転価格ガイドライン」(2017年版)の注目すべき点(3)」☞
https://shin-sei.jp/itenkakaku_news/news_201810311053/

【新設】66の4(9)-1(固有の特性を有し、かつ、高い付加価値を創出するために使用されるもの)

きわめて重要な解説と考えます。なぜなら、令和元年(2019)度税制改正で新設されました「特定無形資産」の定義を示す部分でもあるからです。そして、「特定無形資産」に該当すれば、「特定無形資産国外関連取引の価格調整措置」(租税特別措置法第66条の4第8項)が発動される余地があるためでもあります。実際、当該「【新設】66の4(9)-1」は、同8項を受けた租税特別措置法施行令第 3 9条 の 1 2第 1 4項に関する解説ですから、無形資産の譲渡を図ろうとお考えの法人は、必読です。

【新設】66の4(9)-2(予測利益の金額を基礎として算定するもの)、【新設】66の4(9)-3(著しく不確実な要素を有していると認められるものかどうかの判定)、【新設】66の4(9)-4(災害に類するものの例示)

各々の解説は、「特定無形資産国外関連取引の価格調整措置」(租税特別措置法第66条の4第8項)が発動を検討する際の「適用場外の検討」での判断事項となります。判断如何により、予測値と実績値の乖離幅が20%超である場合は、価格調整措置が発動されることになるため、大切な解説と言えるでしょう。

おわりに

今回の趣旨解説の発遣は、納税者・実務家などにとって大変有意義なものと考えられます。

なお、価格調整措置の発動の判定期間(5年間)の取扱いについての解説がなかったことは、実務家としては残念に感じます。すでに出版されている書籍の中には、5年間の判定について、予測値と実績値の乖離幅が20%超の判断を、あたかも5年間の累積検証で行うと読める記載があるものがあるからです。

しかし、法令上、その判定は、あくまでも単年度で行うものと考えられます。つまり、5年間にわたり一度も20%の乖離がなければ、その後は価格調整措置の適用が免除されるわけです。価格調整措置は、ひとたび発動されれば、会社に多額の是正を求められる可能性も高くなります。出版されている専門書でも誤解が生じるほど法令も読みづらいだけに、何らかの解説があってもよかったものと思料されるのです。