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経済産業省が、「デジタル経済下における国際課税研究会」を設置

経済産業省は、経済のデジタル化が加速する中、我が国企業の競争力強化及び経済活性化に資する公正な国際課税の在り方を検討するため、「デジタル経済下における国際課税研究会」を設置し、第1回を3月1日に開催しました。

開催は、月1回程度行われ、今夏を目途に、一定のとりまとめが行われる予定とのことです。

詳しくは、こちら☞
https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210301002/20210301002.html

解説

経済協力開発機構(OECD)は、2019年1月、いわゆるデジタル課税に関する「協議文書」を公表しました。英国、米国、インド(新興国)の3案が示されたものです。この中で、2019年1月の「ポリシーノート」を受け継ぐかたちで、第1の柱(Pillar One)と第2の柱(Pillar Two)が示されてもいました。

第1の柱とは、デジタル化された経済のより広範な課題に対処し、課税権の割り当てに焦点を当てた議論です。

OECDは、GAFAに代表されるデジタル・プラットフォームなどに対する課税、いわゆるデジタル課税の議論について、2020年中の合意をめざしていました。しかし、COVID-19や米国の新たな提案などから、2021年中頃の合意と、目標が変更されてもいます。

第2の柱とは、BEPSプロジェクトが終了した2015年10月以降、依然として残るBEPS問題に対処するものです。その重大なテーマの1つに、タックスヘイブンを利用した租税回避行為を、いかに封じ込めるかの議論があります。

さて、今回設置された研究会は、この第1の柱と第2の柱の両方を議論するというものですから、広範囲に及びます。

これまでOECDで議論が進められてきた問題は、文字通り国際課税の問題です。わが国では、財務省主税局参事官室がOECDの会議に参加し、わが国の意見を主張してきました。

ここに至り、経産省が立ち上げた研究会は、「設置趣旨」の中で示されているように、「デジタル課税に関するOECD等の国際的な議論をも踏まえつつ、我が国企業の競争力強化、経済活性化に資する公正な国際課税について、今後の短期的及び中期的な在り方を検討する」ということですが、研究会自体は経済産業省によるものですから、産業界の意向が色濃く反映された提言となることでしょう。

そして、とりまとめられた物は、財務省に対する提案として、今後、示されることになるでしょう。

なお、研究会の「委員名簿」には、オブザーバーとして、財務省主税局参事官室、国税庁調査査察部調査課の記載もあります。

今後の研究会の議論が、注目されるところです。