国境を超えるEコマースと付加価値税
コロナ渦においても、日本の個人又は法人がビジネスチャンスを求めて大手のEコマースのプラットホームにテナントショップを開設し、国境を越えて事業を行っています。
EU加盟国の顧客に対する商品の販売後、購入者から購入金額と支払金額が相違するとのクレームを受けることがあります。
EUの顧客との取引については、VAT(付加価値税)が課税されることから納税の仕組について注意が必要です。
そこで、今月は、トラブルを避けるため、クレームの原因と対策、そして、日本の事業者が、知っておくべき最新のVATの納税方法について紹介します。
1 EUの付加価値税の納税義務者
EU加盟国内の資産の譲渡又は役務の提供はVATの課税対象となり、資産の譲渡又は役務の提供を行う者はVATの納税義務者となります。
2 EU加盟国内の付加価値税の免税措置の撤廃
EU加盟国は、従来からVATを各国の財源としていますが、特例とし150ユーロ以下の輸入品についてはVATを免税としていました。
2021年7月1日以降の輸入品については、この免税措置を撤廃することにより、輸入品のすべてについて課税対象としています。
日本の個人又は法人とEU加盟国の顧客との間の取引品はこの輸入品に該当します。
3 顧客からのクレームの原因
日本の事業者が受けるクレームの原因は次の場合が考えられます。
- 購入者が2021年7月1日以降の免税措置の撤廃を理解していない場合
- 納品時に現地の郵便事業者等が購入者からVATを徴収する場合
- リバースチャージ方式によりVATの納税義務が商品の購入者に転嫁されている場合
4 クレーム対策とVAT納税のためのIOSSの活用
IOSS(Import One Stop Shop)とは、輸入ワンストップショップといわれるもので、EUの消費者との取引に関し発生するVATの納税義務を簡素化できる新制度で今年の7月1日より導入されている納税方法です。商品の販売者やマーケットプレイスが販売時点でVATを徴収し、当局に納税する仕組で、商品購入者が予期せずVATを負担することがなくスムーズな取引を行うことができます。
また、リバースチャージ方式により、納税義務が商品購入者に転嫁される場合には、事前にアナウンスをすることが、クレームの防止になります。