法制度
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- 2003年租税基本法(Abgabenordnung: AO)90条3項において移転価格の文書化の義務規定が導入。
- 2003年10月には「租税基本法90条3項の文書化の種類・内容・範囲に関する政令」が連邦参議院で可決され、6月に遡及して施行。
- 2005年には「国外関連者との取引に係る調査等の行政原則に関する通達」が発遣。
- 2008年に企業税制改革法案2008(The 2008 Corporate Tax Reform Act; Unternehmeansteuerreformgesetz 2008)を施行し、法人税に係る実行税率10%程度の引き下げを行うなど法人税制改革を実行。
それに伴い、同年、国際取引課税法(Foreign Tax Code: Auβbensteuergesets)第1条を改正し、移転価格税制の強化を行った。
- 2008年7月に機能移転に関する政令が可決され、2008年1月1日に遡及して施行。
- 2014年にドイツ外国税法第一条第5項“the Authorized OECD Approach:AOA”(「承認されたOECDアプローチ」)を導入し、移転価格税制をOECDの2010年レポートの基準に近づけた。
- 2014年10月に「恒久施設への帰属所得に係る法令」を公表。
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移転価格算定方法
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- 国際取引課税法により、比較可能な独立企業価格が算定されうる場合は、CUP法やRPM、CPMが優先される。比較可能な独立企業価格が算定できない場合は、CUP法やRPM、CPM、PS法、TNMMのもとで限定的なデータを利用することができる。限定的なデータすら利用できない場合のみ、「仮想的独立企業間テスト」(Hypothetical Arm’s-Length Test)を利用することができる。
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申告時の情報開示
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別な開示は要求されない。
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移転価格文書
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- 国外関連者取引について文書化の義務規定が導入(租税通則法第90条第3項)。年毎の特別な要求はない。
- ただし、「例外的取引」(extraordinary transaction) については、速やかに文書化しなければならないとして、「同時文書化」を義務付ける。具体的には以下の取引については、事業年度終了後6か月以内に文書を作成しなくてはならない。
- 事業再編時における資産譲渡
- 企業の機能、及びリスクの大きな重要な変更
- 移転価格の設定に大きな影響を与える
- 重要な長期契約の締結及び変更
- 課税当局は文書の提出要求をすることができ、提出期限は要請があってから60日以内。例外的取引については30日以内。
- 文書化には以下の内容が要求される。
1. 出資関係、事業内容、組織内容等一般情報 / 2. 国外関連者との取引内容 / 3. 機能及びリスク分析 / 4. 移転価格分析 また「特別な場合」にそれぞれの場合に必要な文書を用意しなくてはならない。
- 有形資産の関連者間取引額については500万€未満または、その他の取引額については50万€未満の小規模企業については、文書化及び同時文書化の義務は免除。ただし、要請があった場合には60日以内に可能な文書を提出しなくてはならない。
- 文書はドイツ語。ただし、英語での文書を要請できる。実際に、たいてい英語で文書が提出され、要請されればドイツ語に翻訳をつける。
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罰則
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- 納税者が、課税当局から要求された文書を提出しない場合、あるいは提出された文書が利用不可能な場合、所得調整額の5%から10%の罰則金が賦課される。罰則金が5,000€以下であれば、ミニマムペナルティとして5,000€の罰則金が賦課される。
- 文書の提出が要求後60日以上遅滞した場合、超過日数1日にあたり100€、最大で100万€課される。
- 文書化の不履行について正当な理由がある場合、または不履行責任が軽微な場合には罰則金の賦課を行わないことができる。
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挙証責任
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- 原則として納税者側にあるとされているが、その範囲が明らかでない。
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APA
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- 従来はドイツ連邦財務相はAPAに消極的であったが、APAの取扱いに関する通達を2006年10月に発表し、積極的な姿勢に変わった。
- 二国間APA、多国間APAが推奨される。一国内APAは租税条約のない国との取引に限定。
- APA申請料は20,000€、更新料は15,000€、APA適用期間の修正料は10,000€である。ただし、関連会社間の有形資産取引あるいはほかの関連者間取引が5,000,000€以下の時は上記に係る費用は半額となる。
- APA適用期間は少なくとも3年はかけるべきだが、5年は超えるべきではないとしている。
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その他
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- 移転価格の課税の対象は25%の株式を保有関係にある国外関連者取引。
- 比較対象会社はドイツ企業を求める傾向。データベースはDafneまたは、ORBIS使用。
- 2014年の「恒久施設への帰属所得に係る法令」の下で国外本店がドイツ支店、もしくはドイツ本店が国外支店を有する場合、本支店間の内部取引にも独立企業原則が適用されて、支店の帰属利益を算定すること、支店に係る「補足計算書」を作成、移転価格文書の整備を義務付けた。2014年12月31日以降に開始する事業年度から適用。
- CCA/CSAは認められていて、損金の額に算入できる。
- 国際間の事業再編においては、国外に事業を移管する際、有形資産、無形資産、又は営業権の移転が伴わない場合であっても、「機能・リスク」の移転として適切な対価により譲渡しなければならない。
- 所得相応性基準の概念の導入(取引後10年間を期限として、無形資産取引時点での予測から実際の利益獲得状況が大きく乖離した場合、無形資産移転価格に対し調整が行われる。)
- 所得税務申告の移転価格と財務表のそれが異なる場合は、移転価格調整がなされなくてはならない。
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