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各国移転価格NEWS~香港~【1】

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2016年10月26日、香港政府はBEPSを導入した移転価格規則を含む一連の政策に関する公開草案を公示し、Financial Services and the Treasury Bureau(香港財経事務及庫務局のウェブサイトにて公開しました。
香港においては、これまで移転価格税制についての法整備が進んでいるとはいえませんでした。2009年になりようやく、12月に税務当局内での解釈と実務指針(Department Interpretation and Practice Notes= DIPN)第46号として移転価格に関するガイドラインが公開されました。同ガイドラインによると、税法の明文規定と相いれない場合を除いてはOECDガイドラインの原則を適用すると述べられています。けれども、同ガイドラインは税法そのものではなく、また、これまで文書の規定についても税務当局は税務プラクティスとして移転価格文書を準備しておくことを推奨しており、移転価格税制や独立企業間原則の充足を確認するために文書の提出を要求することもあったものの、文書に係る準備規定は特に定められていませんでした。このように概観すると、今回2016年10月の公開草案は香港での移転価格への関心の高まりを表しているといえるでしょう。
公開草案は全7章から構成されています(第1章 BEPSパッケージの概要、第2章 香港の導入の対応策、第3章 移転価格規則制度、第4章 移転価格の文書化と国別報告書、第5章 多国間協定、第6章 その他の関連事項、第7章 意見公募)。第4章でOECDの奨励する移転価格文書化の三層構造アプローチを含む(行動計画13)移転価格の文書化(マスターファイルとローカルファイルの作成)と国別報告書について提案されています。移転価格文書のうち、公開草案 第4章で移転価格文書および国別報告書について規定されています。ここでは、過度なコンプライアンス負荷を避けるため、1. 総年間売上が100百万香港ドル以下、2. 総資産が100百万香港ドル以下、3. 従業員が100名以下、これら3つの条件のうち、いずれか2つを満たす納税者はマスターファイルとローカルファイルの作成が免除されます。国別報告書に関しては、その提出基準はOECDの推奨基準に従って750百万ユーロ(約68億香港ドル)と提案されています。国別報告書の提出は事業年度末から12か月以内に求められます。提出については、最終親会社が提出することになっていますが、「副次」、「代理」申告制度の実施に関連するOECDの規定に従って代理による提出も認められます。
これらの文書は毎年英語、又は中国語で作成されることが求められます。
なお、文書に係る要求に遵守しない場合、香港税務条例(Inland Revenue Ordinance、IRO)の中でペナルティ条項を導入することが提案されました。
対象となる企業は2018年中に情報を収集し、2019年度中に初回の移転価格文書を提出することになります。
なお、今回の公開草案に係る意見を公募しており、締め切りは2016年12月31日となっています。修正法案が2017年中ごろに立法議会に提出される予定で、香港をとりまく移転価格税制の法整備がさらにすすめられるでしょう。