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各国移転価格NEWS~ドイツ~

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2016年10月に連邦財務省はEU指令実施法案を公表し、OECDの移転価格文書化に係る国別報告書、マスターファイル及びローカルファイルの採用が提案され、同時に国内法(General Fiscal Code)はBEPS行動13の報告書に沿ったものに改訂されました。
さらに、2017年1月にBEPS対抗指令(Anti-BEPS-I法)のもと、移転価格文書の3層のアプローチ、すなわち、一般的情報に係るマスターファイル、ローカルな事業体の詳細な情報に係るローカルファイル及び個別の国における事業活動に係る国別報告書が導入されました。
上記3種の文書について具体的にみてみると、マスターファイルに関して提出の対象となるのは売上高が1億ユーロを超えている納税者であり、税務調査で要請された際に提出することが要求されています。対象初年度は2017年となります。ローカルファイルに関しては提出義務のある者や対象初年度、期限、言語についてはマスターファイルと同様となり、BEPS行動13のローカルファイル従って報告されることになりますが、関連者間取引額が限定的な場合には簡略化することが可能です。国別報告書に関して提出の対象となるのは、年度の連結売上高が7.5億ユーロを超えている多国籍企業となります。これは在ドイツ子会社にも適用され、会計年度終了から12か月以内に提出を義務付けられています。報告書の親会社代理提出が承認されています。在ドイツ子会社は、最終的親会社の法人名及び管轄税務機関を報告しなくてはなりません。
いずれの文書も言語は現行通りドイツ語で提出が要求されています。
ペナルティに関しては、納税者が課税当局から要求された文書を提出しない場合、あるいは提出された文書が利用不可能な場合、所得調整額の5%から10%の罰則金が賦課されます。罰則金が5,000ユーロ以下であれば、ミニマムペナルティとして5,000ユーロの罰則金が賦課されます。文書の提出が要求後60日以上遅滞した場合、超過日数1日にあたり100ユーロ、最大で100万ユーロ課されることになります。
さらに今回Anti-BEPS-I法討議草案が発行され、ローカルファイルとマスターファイルの違いが明確になるように修正案が示されています。討議案をまとめると以下3点になるでしょう。第一に、重要な機能とリスク分析の要求に関するものです。取引の際どの関連者がどのような機能やリスクを持っているかについて、量的証拠提示が要求されました。第二に、納税者が移転価格を設定する際、比較関連者を利用する際のサーチ・プロセスの透明性に関するものす。カンパニーデータベースの設定を記録と、税当局は納税者によってなされたサーチ・プロセスを変更させたり、再現させたりする可能性が提案されました。第三にマスターファイルに関する新たな条項やマスターファイルの領域を規定する付録に関するものです。付録には組織構造、サプライチェーン、主要な役務協定、重要な組織再編、無形資産分析や連結会社間での金融活動などマスターファイルで取り扱う項目が規定されています。