各国移転価格NEWS~アメリカ~
アメリカは移転価格税制の歴史が最も古い国の一つであり、内国歳入法第482条や米国財務省規則(Treas. Reg.) 6662-6に定められる法則に則って行われてきました。BEPS行動計画13のOECDの最終報告「移転価格文書化」で3層構造の移転価格文書化が行われるべきことが示されると、OECDのメンバーとしてアメリカもまた文書化の改正へと動き始めました。ローカルファイルについては、すでに現行法において、ローカルファイルと目的及び機能を同じくした文書の提出が求められています。マスターファイルについてはまだ提出は定められてはいませんが、近いうちに行動計画13に則り法の整備が進められるでしょう。
今回は、近年段階を経て定められてきた国別報告書(CbC report)の提出についてまとめておきます。アメリカにおいて、国別報告書の規則案に関しては、2015年12月21日に国別報告書規則案(REG-109822-15)が公表され、続いて翌年2016年6月29日には、財務省とIRS(税務局:Internal Revenue Service)より国別報告書に係る最終規則案(TD 9773)が公表されました。同最終規則には、直前会計期間の連結グループ売上が8億5千万ドル以上の米系多国籍企業の究極の親会社に国別報告書の提出が適用されること、様式はOECD行動計画13の最終報告に沿っていること、同規則は、親会社の2016年6月30日以降に始まる税務年度を報告対象期間として適用されること、が明記されています。国別報告書は年度の法人税申告書と併せて提出の義務あり、報告義務に違反した場合には、10,000ドル以上/50,000ドル以下の罰金が定められています。
最終報告案が公表された以降、2017年にかけて提出する際の様式が行動計画13に則り整えられてきました。2017年1月に、IRSは納税者が国別報告に関する情報を提出する際の2種類のフォーム、Form8975-Country-by-Country Report とForm8975(スケジュールA)— Tax Jurisdiction and Constituent Entity Information の2種類のドラフトを提示しました。同時に、両フォームの提出手続が書かれている、改訂版Rec.Proc.2017-23が公表され、提出時期等が明記されています。また、同手続きによると、2017年9月1日から法人税申告にともなう早期申告期間に提出が可能となります。
先日2017年6月に、IRSは国別報告書のフォーム最終版及び提出手続きの改訂版が発表され、以下が明記されています。
- 2016年6月30日以降の税務年度の歳入が8億5000万円を超えるアメリカの多国籍企業(U.S.MNE)の究極の親会社はForm8975を提出する必要がある。
- Form8975(国別報告書)及びスケジュールAは、国別報告書の提出が要求される提出者
によって使用される。提出者はMNEを構成する企業を報告しなくてはならない。報告内容は、税務管轄/構成企業の国/主要な事業活動/財政、及び雇用状況(歳入、利益、法人税、資本金、余剰金、現金以外の有形資産等)である。 - Form8975(国別報告書)及びスケジュールAはIRSに法人税申告とともに提出されな
ければならない。
IRSはIRS国別報告書に関するWebページを開始しました。ニューズレターも発行されています。2017年7月よりFAQも掲載が開始されました。
(https://www.irs.gov/businesses/country-by-country-reporting-guidance 等参照)
さらにIRSは国別報告書の各国との自動的な交換協定をすすめていくことも先日公表し、アメリカにおける移転価格税制の改訂は急速に進められているといえるでしょう。