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各国移転価格NEWS~イギリス~

イギリスの移転価格税制は、OECDのガイドラインに沿ったかたちで導入されており、2010年にTaxation(International and Other Provisions) ACT 2010 (TIOPA 2010)が公表され、その第4章で定められています。2015年には「グーグル税」と呼ばれる迂回利益税が導入され、グローバルな潮流に英国も遅れをとらぬように国内における法整備が次々と進められてきました。そして、2016年2月には国別報告書の導入が議決で可決され、9月には修正法案が提出され、HMRC(英国国税庁)はイギリスの税戦略として国別報告書を取り入れていくことを決議しました。
本稿では、EUでも提唱されている多国間の情報交換によって各国が税金の透明性に向けて移転価格制度を整備する中、OECDが提唱する三層構造の移転価格文書の導入実現にむけてのイギリスの動向及び直面する課題を考えます。
2016年に国別報告書導入に向け意欲的な法改正がみられたものの、具体的な時期をめぐっては多くの問題を残しています。つまり、現在のイギリスの税務戦略をになうSAO(Senior Accounting Officer Regime)にあるグループ企業の多くは、現在の国別報告書の対象となっていないのです。同様に、イギリスを本拠地としない企業が、すでに別の税務管轄国で提出していたとしたら、イギリスで国別報告書の提出を義務付けるかどうかもはっきりしていないのです。また、多くの企業は、商業上慎重に扱うべき情報の取扱いについても懸念をあらわしています。こうした課題を抱えながらも、英政府は国別報告書の支持を積極的に表明することで周囲の国々から取り残されないようにしいるのです。今後、EUや他のOECDメンバー国と同様の措置をとるのかどうか、イギリスの対応に注目が注がれているところです。
さて、HMRCは、予定される国別報告書の提出用フォーマットであるXMLスキーマとガイドラインを、2017年8月に公表しました。これはすでにOECDによって提供されているものです。このフォーマットを使用し、間もなく開始されるHMRCの報告サービスにより電子申告で提出することになります。
このようにイギリスは、三層構造である移転価格文書のうち国別報告書の提出は進められていますが、残るマスターファイルとローカルファイルについては、現段階では実行されていません。HMRCは、OECDの基準を反映させた指針を公表し、移転価格文書は取引や事業の規模・複雑さにより準備されるべきであると述べているだけです。しかし、イギリスの多国籍企業は、現時点では強制ではないものの、今後、国別報告書により示した内容の説明を加えるためにも、自発的にマスターファイルとローカルファイルの準備をしていくことが求められることになるでしょう。