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各国移転価格NEWS~メキシコ~

メキシコにおいては比較的早くから、様々な産業において移転価格調査が積極的に行われてきました。OECDのBEPS13に沿ったかたちでの対応は、他の南米や中南米諸国と比べてもきわめて高いと言えるでしょう。同国では、1997年に移転価格税制が導入され、2014年の税制改正により、前年度売上が、1,300万ペソ以上か、専門家などのサービス収入が300万ペソ以上となる場合、移転価格文書の提出が義務付けられました。それらには税務監査意見報告書(Dictamen Fiscal)、各種支払報告書(DIM)の付表Anexo9(移転価格税務報告書)の国外関連取引報告書、重要取引情報申告書(Form76)といったものが含まれます。また、一定の条件を満たす法人については、DISIF(Declaracion Informativa sobre su Situaciaon Fiscal:税務関連情報申告書)を翌年6月30日までに税務当局(SAT)に提出することが義務付けられました。同規定には、外国法人または非居住者との国外取引も含まれています。
着実に移転価格税制の法整備が進められるなかで、2016年度税制改正では、メキシコ法人所得税法(LISR)76A 条において、BEPSの行動計画13に則り、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の提出義務が導入されました。それぞれのファイルの提出条件及び必要記載事項については、以下の通りです。

マスターファイル

メキシコ連邦納税法(CFF)32H条において、関連者間取引を行う納税者と同じ多国籍企業グループに属する複数の納税者がある場合には、1つのマスターファイルでまとめて行うことが認められています。
具体的な提出義務要件としては、DISIFを提出する納税者で、①一定金額(2017年1月1日以降は708,898,920ペソ)以上の収入がある、②株式上場をしている、③SAT承認済みの選択可能納税者としてメキシコ国内の複数法人を企業グループとしてまとめて税務申告を行っている、④半官半民組織、➄恒久的施設を有する外国法人、のいずれかに該当する企業となります。
必要な記載事項としては、資本関係、地理的な場所、組織形態にかかわらずグループ内すべての法人の組織図、グループの事業概要、保有する無形資産情報、借入・投資活動情報、租税・財務状況、その他必要に応じて追加する事項が含まれます。

ローカルファイル

マスターファイルの提出要件を満たす多国籍企業グループの一員である納税者は、ローカルファイルによる関連会社間取引報告及びサポート資料を提出する必要があります。
必要な記載事項としては、提出する法人の事業状況(管理体制、組織図、業務内容)、財務情報、移転価格文書に記載されている関連者間取引、その他必要に応じて追加する事項が含まれます。

国別報告書

マスターファイル及びローカルファイルの提出義務者の内、多国籍企業グループの最終親会社で直前事業年度の連結収入金額が120億ペソ以上の国内法人、または、多国籍企業グループの国外最終親会社に指定されたメキシコ国内法人、もしくは、メキシコに恒久的施設を有する外国法人は、関連者間取引の国別報告書の提出を行う義務があります。通貨はメキシコペソ以外での表記も可能です。
必要な記載事項としては、当該多国籍企業グループ全体の収入金額とその内訳、当期税引前損益、法人税支払額、法人税発生額、前期までの会計上の繰越損益、資本金、当期在籍の従業員、棚卸資産及び有形固定資産、グループ企業リスト、その他必要に応じて追加する事項が含まれます。

これらの文書提出は、SATの電子申請システム(Declarciones Anuales Informativas de Partes Relacionadas; DAIPR)にり、当年度情報は、原則として翌年12月31日までに申告することが義務付けられています。言語はスペイン語です。
その後も税務細則は更新され、2018年7月に移転価格税制の修正ガイダンスが公表されました。当該修正ガイダンスでは、文書の提出期限等について改正されました。例えば、メキシコ連邦税法第31条Aにより税務報告書を提出する納税者は、付表9とローカルファイルを、税務報告書の提出時に一緒に提出することが明示されました。税務報告書に添えて付表9を提出しない納税者は、法人税申告書に付表9を添付し、2019年12月31日までにローカルファイルを提出しなくてはなりません。もし、企業が税務報告書を提出する必要がなく、付表9のデータがローカルファイルのデータと一致する場合は、企業は付表9を会計年度の翌年の6月30日までに送る必要があることなどが明示されています。文書の提出期限は文書ごとに異なるため、気を付ける必要があるでしょう。
このようにメキシコにおける移転価格税制の整備は着実に進められ、今後も周辺諸国への影響を及ぼすと考えられます。