各国移転価格NEWS~スイス~
スイスの移転価格税制は、OECDの指針に準拠しているものの、移転価格に特化した文書化の規定を定めてはおらず、スイスで事業をおこなう事業者は、関連者取引について独自の資料の提出を求められていました。2015年にOECDからBEPS最終報告書が公表されると、2016年4月13日に連邦参事会(Federal Council)は、国別報告に関する法案を公表しました。これは、BEPS行動計画13の移転価格文書化と国別報告書の作成を勧告するものでした。同法案では、詳細が規定されています。まず、国別報告書のスイス連邦税務当局への提出義務や適用年度等が明らかにされました。これらが遵守されない場合のペナルティについても触れています。
その後、2017年6月、スイス議会は多国籍企業の国別報告書の自動交換に関する新たな連邦法を採択し、同年9月には、国別報告書に関してより詳細な情報を提供するための条例が制定されました。同条例は2017年12月より施行されています。
スイスの国別報告書規則の主要内容は以下の通りになります。
- スイスの税法上居住者たる法人の連結収益が9億スイスフラン超である場合、国別報告書を用意し、提出すぐ義務がある。
- この基準に達するとき、スイスの税法上居住者たる事業者は、2018年1月以降の事業年度より国別報告書を提出しなくてはならない。
- なお、国別報告書を既に導入している国でのペナルティを避けるため、スイスに居住する多国籍企業は、2016年1月1日以後に開始事業年度から、自主的に国別報告書を提出することが可能である。
- 国別報告書の表1と表2はBEPS行動13のOECDの指針の内容と一致している。
- 2020年からパートナー国と国別報告書が交換される
※スイスが国別報告書を交換するパートナー国のリストは、近々、国際金融担当事務局のウェブサイトに掲載 - 財務省国際金融担当事務局に対し、国別報告書の自動交換の一時停止を要求することができる
- 国別報告の不提出、不正確・不完全な国別報告書の提出に対しては25万スイスフランまでのペナルティが課さられる。更に、国別報告の調査過程で当局に協力しない場合には、5万スイスフランまでのペナルティが課される可能性があり。
国別報告書は、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語での提出が可能となり、OECDの推奨している電子フォーマットXMLスキーマを使用することになります。上記の他にも同法案では、スイスの構成会社が、最終親会社からの通知(Notification)を受け、2018年会計年度から代理人となることが認められていますが、原則、2018年1月1日以降に始まる事業年度については、スイスの最終親会社が国別報告書を提出する必要がある(事業年度の最終の日から90日以内)等が定められています。
なお、現時点では、BEPS行動13の他の勧告(マスターファイル、ローカルファイルの作成等)の実施は、見込まれていません。