各国移転価格NEWS~ポーランド~
はじめに
ポーランドは、欧州の東部と西部をつなぐ文化、歴史、政治の架け橋の役割を果たしていますが、2004年のEU加盟後は経済の側面からもその役割が益々重要となってきています。また、豊富な労働力、地理的位置および国土の広さなどの要因から多くの外資系製造業の投資が増えています。日本からも自動車およびエレクトロニクス産業の投資が非常に多く、また最近ではクリーンエネルギー分野への投資も増えています。
こうした状況下、ポーランドでは移転価格税制に対する関心は強く、早くからOECDの移転価格ガイドラインに沿った法令改正や国内のガイドラインが示されています。2017年にはBEPS行動計画13に沿ったかたちの3重構造の移転価格文書が導入されました。2018年7月には、移転価格法の改正案を含むパブリックコンサルテーションを反映した移転価格にかかわる法人税と個人所得税改正法案が公表され、同年10月に承認されました。2019日1月からは、新しい移転価格法が施行されています。同年4月15日には、国別報告書に関する改定を含んだ移転価格修正法が公表され、すでに施行されています。
今回は、ポーランドで2019年1月より施行されている新移転価格文書化における重要な変更点、および、その後に施行された国別報告書に関する修正法について見ていきましょう。
修正法の注目点と適用基準
新移転価格法における文書化の重要な変更点としては、1つ目に、税務当局の決定権限が拡大され、独立企業原則に従い国外関連者が定義され、国外関連取引を認定することが可能となりました。
2つ目に、新たな文書化義務の閾値(Documentation materiality thresholds)が、以下のように定義されました。
①課税事業年度における商品や金融取引については、1,000万ズロチ(約2,700万USドル
②サービスや他の種類の国外関連取引についてはは、200万ズロチ(約55万ドル)
マスターファイル
3つ目に、マスターファイルは、次の条件にすべて当てはまる場合に提出義務があると改訂されました。
①当該企業が、ローカルファイルの作成を要する企業であること
②当該企業が、連結財務諸表の作成を要する関連者グループに所属していること
③連結グループの前年度の事業年度における連結収入が、2億ズロチ(約5億40万USドル)超であること
なお、マスターファイルについては、英語での提出が可能となりました。
移転価格フォームと提出等期限
4つ目に、納税者は、これまでの移転価格フォーム、CIT-TP/PIT-TPに代わって、新しい電子フォーム、TP-Rフォームを採用して提出するよう義務付けられました。同フォームには国外関連者との国外関連取引に関する情報を記載することが要求されています。
5つ目に、納税者は、①移転価格文書を準備し、②記載されている国外関連取引が独立企業間価格に従っておこなわれていることを裏付ける書類を、事業年度終了後9か月以内に提出することを義務付けられました。
文書の準備期限は、ローカルファイルが事業年度終了後9か月以内、マスターファイルは、事業年度終了後12か月となります。また同新法では国内取引に関しての文書化の免除が定められています。
国別報告書
次に、国別報告書に関する修正法では、1つ目に、所与の国や地域において国別報告書の提出の義務がない場合は、代理報告として、グループ企業の情報をEU加盟国外の国や地域に提供することを可能としました。その場合は、提供した報告書をポーランドにも提出するように義務付けられました。これは、2016年1月1日以降に始まる会計年度に遡って適用されています。
2つ目に、財務諸表の通貨単位をズロチ建てにより用意する資本グループに対しは、連結収入の閾値は32憶5,000万ズロチと定められ、2017年1月1日以降に始まる事業年度に遡って適用されます。
3つ目に、国別報告書の提出の締め切りが報告すべき事業年度終了後3か月に延長されました。これは修正法施行日(2019年4月29日)より適用となります。国別報告書は英語かポーランド語での提出となります。
修正法により、国別報告書の提出に関する管理は、ポーランド国税庁(the Head of the National Revenue Administration)が行います。
おわりに
ポーランドは日系企業の欧州への進出拠点としてメリットも多い一方で、移転価格の変更が頻繁に行われ、複雑になっているために最新の情報の確認に留意が必要でしょう。