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各国移転価格NEWS~ベトナム~【3】

同コラムでは以前2回にわたり、ベトナムの移転価格税制の動きをみてきました。2回目(2017年5月26日掲載 https://shin-sei.jp/itenkakaku_news/news_20170526834/)に、2017年2月に発行された新移転価格税制、Decree No.20/2017/ND-CP(Decree20)を取り上げました。同税制により、ベトナムにOECDの推奨する3層の移転価格文書の制度が導入されました。マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書について、条件に応じてそれぞれの文書の準備の必要を明確にしました。同法令は、2017年5月1日から施行されています。

2020年11月5日に、ベトナムの移転価格税制に新しい動きが見られました。Decree No.20/2017/ND-CP(Decree 20)に代わる、新しい移転価格税制 Decree No.132/2020/ND-CP(Decree 132)が公表されました。Decree132は2020年12月から効力を発し、2020年事業年度以降、適用されることになります。 Decree132の導入による主な変更点は以下です。

  1. 適用範囲の拡大
    同法は関連者取引を行う法人税の納税者に対して適用されていますが、外国人契約者も適用となる可能性があります。「関連者」の定義も拡大され、企業と個人との一定の司法譲渡取引および融資取引も関連者取引として扱われるようになりました。
  2. 独立企業間価格レンジの変更
    Decree132では、独立企業間価格レンジの下限を、Decree20で定められていた25百分位から引き上げ35百分位とし、独立企業間レンジを35百分位から75百分位と変更しました。もし、調査の結果、納税者の分析結果が範囲からずれてしまったら、税務当局は中央値まで移転価格調整をおこなうことができます。
  3. 商用データベースの利用
    Decree132はベンチマーク分析を行う際に、納税者と税務当局双方に有益なデータソースとして商用データベースと公共データベースの利用を推奨しています。しかしながら、納税者が法規制に準拠していない場合は、税務当局には、移転価格調整のため、内部データ(すなわち、非公開比較対象データ)を利用することが可能な権利が与えられます。コンプライアンスに準拠しているかどうかは主観的なものであるため、当局と納税者間で議論になるとおもわれます。
  4. 国別報告書にかかる強化された要求
    Decree132では、国別報告書の作成と提出についても、以下のように定めています。

①課税年度の総連結収入が18兆ドンを超えるベトナム最終親会社は、当該課税年度の終わりから12か月以内に国別報告書を税務当局に提出する必要があります。

②所在する国で国別報告書を提出する必要のある外国の親会社(代替親会社であっても)持つベトナムの納税者に関しては、ベトナムの税務当局は、親会社の所在国と情報の自動交換協定(AEOI)を締結している場合、AEOIを通して国別報告書の情報を交換します。しかしながら、ベトナム税務当局と親会社の所在国の税務当局の間に有効な協定を締結していない、あるいは、自動交換協定は締結しているが、自動交換の際にシステムエラー等(自動交換システムの停止等)で実際に情報が交換できない、といったように情報交換ができない場合は、ベトナムでの国別報告書の提出が必要となります:

③ベトナムに複数の子会社があり、国別報告書を提出するための子会社が外国の親会社により選定された場合には、事前に認定された納税者が、親会社の事業年度の最終日以降に、ベトナム税務当局に選定通知書を提出する必要があります。また、親会社あるいは、代替親会社の名前、タックスコード、税務管轄区を事前通知する必要があります。

そのほかにも注目すべき点として、利息の損金算入限度の変更(30%まで引き上げ含)、「比較対象企業」の拡大、税務当局から移転価格文書の提出要求、移転価格文書の免除等についても定められています。

2020年事業年度は、Decree132が最初に適用される年となるため、事前に事業や税務コンプライアンスに及ぼす潜在的影響を評価しておくことが大切です。