フィリピン国税庁(BIR)が移転価格文書の作成基準を公表
これまでの経緯と最新通達の要旨
フィリピン国税庁(BIR: Bureau of Internal Revenue)は、2020年12月18日、Revenue Regulation No.39-2020を発遣し、移転価格文書の作成基準などを公表しました。これは先の、全納税者に対して申告書提出時に移転価格文書等を添付するよう求めた、2020年7月8日付Revenue Regulation No.19-2020を、事実上、変更するものです。フィリピンに進出している一部の日系企業などにとっては、移転価格文書の作成が免除されることでしょう。また、移転価格文書を作成する必要のある納税者にあっても、申告時には申告書別表Form1709を提出するのみでよいことから、朗報といえるでしょう(Form1709について、簡略化もはかられました)。
作成基準は、概ね次のとおりです。なお、以下の基準は、Revenue Regulation No.39-2020の該当部分の一部を抄訳したものであることから、移転価格文書の作成の要否の検討に当たっては、通達原文にてご確認ください。
Form1709の提出基準
a) 大規模納税者(筆者注:BIRにより毎年に指定されます)
b) タックスインセンティブ、タックスホリディと呼ばれる税の恩典を享受している企業(PEZA(経済特区別区)や BOI(投資委員会)登録事業者、優遇所得税率の適用を受ける企業)
c) 直近の課税年度で営業利益が純損失の企業(その他過去2年分も損失が出ている企業)
d) 次の関連者間取引を行っている企業
【移転価格文書の作成基準】
- 年間売上高が、150,000,000ペソ以上、かつ、関連者間取引が90,000,000ペソ以上である企業
- 該当事業年度で、60,000,000ペソを超える有形固定資産の取引がある場合、あるいは、150,000,000ペソを超える無形固定資産の取引がある企業
などです。
コメント
本通達により、申告時には別表1709を提出し、先の通達Revenue Regulation No.19-2020で規定されていた申告時の移転価格文書などを、すべての納税者が添付する必要はなくなりました。その点、納税者の負担が軽減されたことになります。
ただし、移転価格文書の作成を要する納税者は、BIRによる税務調査により、調査担当者から提出依頼があった場合、30日以内に提出する必要があります。移転価格文書の作成には、早くて2か月、通常、3か月を要するのが一般的ですから、移転価格の課税リスクがあると懸念される場合などは、あらかじめ移転価格文書の作成の検討・準備をされることをお勧めいたします。
該当となるBIR通達など
Regulation No.39-2020通達はこちら☞
簡略化されたForm1709はこちら☞
Revenue Regulation No.19-2020通達はこちら☞
ご参考
当初のRevenue Regulation No.19-2020通達発遣時の関連記事「フィリピン国税庁(BIR)が移転価格文書を義務化~金額基準なしに戸惑いの声」(2020年9月26日付)はこちら☞