「デジタル経済下における国際課税研究会」が中間報告書を公表
2020年3月、経済産業省は、経済のデジタル化が加速する中、我が国企業の競争力強化及び経済活性化に資する公正な国際課税の在り方を検討するため、「デジタル経済下における国際課税研究会」を設置し、第1回を3月1日に開催しました。
弊社サイトは、こちら☞
https://shin-sei.jp/itenkakaku_news/news_202103052144/
経済産業省の報道は、こちら☞
https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210301002/20210301002.html
この8月19日、経済産業省は、研究会が作成した「デジタル経済下における国際課税のあり方について」と題した32ページに及ぶ中間報告書を公表しました。内容は、次の3つのパートにより取りまとめられました。
- 日本企業の競争状況と基本的な考え方
- 国際的議論の背景・方向性
- 今後の対応の方向性
今後、これらの問題意識のもと、研究会で議論を深めていく予定とのことです。
以下では、その要旨を示します。
内容(概要)
1 日本企業の競争状況と基本的な考え方
- 内外市場で、外国企業と比べて価格競争力・商品開発力に課題が生じている。
- 国内デジタル市場では、外国企業の独占・寡占が進行している。
- 市場国に支店等がない/租税回避のため無形資産を軽課税国に移転するデジタル企業等と比較すると、大きな税負担格差が生じている。
2 国際的議論の背景・方向性
(1) 市場国への課税権配分(ピラー1)
現状は、市場国では支店など物理的拠点がないため課税できない問題点がある。これらの対応策としては、大規模かつ高利益の多国籍企業の利益の一部を市場国に配分することが考えられる。英国、仏国、インドなどの国々では、すでにデジタル売上税(DST)等を行っている。グローバルで統一的な対応をはかるうえでは、それらの国々はDST等を廃止するなどの調整を要する。
(2) グローバル最低税率課税(ピラー2)
現状は、収益源の無形資産は軽課税国の子会社に移転され、本国でも課税できない問題が生じている。また、法人税率引下げ競争にもつながっている。これらの対応策としては、法人税の最低税率(15%以上)を設定し、 海外子会社の不足分を本国で追加課税できるようにすることが考えられる。
3 今後の対応の方向性
⑴ 国際合意内容(ピラー1)
早期発効が期待される。
また、残された課題としては、次の事項を検討すべきものと考えられる。
- 外国企業による越境取引(オンラインゲーム等)に対する消費税の適正化
- 外国企業の日本子会社等による租税回避対策を必要に応じて強化
- 万が一、ピラー1の発効が遅れた場合、日本はこれまでOECD加盟国と歩調を合わせてきているが、今後、日本国独自の対応策をも検討する必要がある
⑵ 最低税率課税(ピラー2)
主要国が導入すればグローバルに公平な競争に寄与するであろう。
今後の最終合意や国内法化に当たっては、次の事項について検討を要するものと考える。
- 最低税率の導入時期は、主な競争相手国(欧米、中韓等)との関係を考慮
- 現地に実体ある事業者、例えば、製造業等の税負担への配慮
- 既存のControlled Foreign Company(CFC)税制との関係整理、及びその簡素化
- 海外M&A等の海外事業活動の円滑化
- 国内における無形資産の形成及び利用を促進する税制のあり方
中間報告書に関するサイトはこちら☞
https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210819002/20210819002.html