「デジタル経済下における国際課税研究会」が中間報告書を公表 | 移転価格.com | 国際税務専門の税理士事務所|信成国際税理士法人
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OECDが、国際的な最低法人税率15%の国内実施に向けたBEPS第2の柱のモデル規則(ルール)を発表

OECDは、2021年12月20日、「第2の柱に関するモデル・ルール」(以下、「モデル・ルール」といいます。)を公表しました。これは、2021年10月、日本をはじめとするOECD加盟国など137の国と地域で最終合意に達した「新たな国際課税ルール」に関する、「第2の柱」を取り扱ったものです。

モデル・ルールは10の章から成り、第1章では、範囲の問題について説明を行っています。第2章から第5章では、主要な運用ルールが含まれています。第6章では、合併と買収などの事業再編について説明されています。第7章では、特定の税の中立性および既存の分配税制に適用されるルールが、第8章では、管理について、第9章では、移行に関するルールを提供し、第10章では、定義などが含まれています。

なお、OECDは同時に、モデル・ルールの概要、ルールに関する全体のフレームワーク(概要)、FAQ、なども公表しました。

OECD東京センターによるプレスリリースはこちら☞
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/oecd-releases-pillar-two-model-rules-for-domestic-implementation-of-15-percent-global-minimum-tax-japanese-version.htm

OECD本部によるプレスリリースはこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/oecd-releases-pillar-two-model-rules-for-domestic-implementation-of-15-percent-global-minimum-tax.htm

解説

OECDは、2012年から、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトを2015年まで行ってきました。プロジェクトのうち、2015年10月の段階で未解決であった事項のいくつかに、行動計画1「電子経済の課税上の課題への対処」の問題(これを第1の柱(Pillar One)と呼んでいます)がありました。

また、行動計画5「有害税制への対抗」(各国優遇税制の有害性を経済活動の実質性から判定するための新基準及び制度の透明性を高めるための新基準を検討)の問題がありました。

これらの問題については、法人税率の最低限を定めることにより解決し得るとして、いわゆる「デジタル課税」の方法を検討するなかで、第2の柱(Pillar Two)としてOECD事務局から示されたのでした。

当初、GAFAなどを念頭に置き議論されたデジタル課税でしたが、最終的な「新たな国際課税ルール」では、プラットフォーマー・ビジネスに限定されない決着となりました。

その結果、第2の柱、すなわち、企業誘致を目的とした法人税の引き下げ競争に歯止めをかけ、課税逃れを防ぐことを目的に、15%の最低税率を導入することになりました。

適用基準

新たに導入される最低法人税率15%は、売上高が7億5,000万ユーロ(約1,000億円)以上の企業に適用されます。ただし、海運業は免除される予定です。

なお、デジタル課税の議論が発端であった第1の柱(Pillar One)の該当基準は、売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、税引前利益率が10%を超える多国籍企業でとなります(採取産業、規制金融サービスは適用除外)。これにより全世界で100社程度が適用になる見込みです。

当該金額基準は、7年後に見直しがはかられる予定であり、現段階では、売上高は100億ユーロ(約1.3兆円)に引き下げられる可能性があります。

実務上の問題

実務上の問題としては、様々なことが考えられますが、ここでは2点を取り上げておきましょう。

1つ目は、各国・地域の税務の執行機関が統一的に運用していく必要があり、特定の国が、独自の解釈により「新たな課税ルール」を施行・運用した場合、国と国との運用上に摩擦が生じ、ひいては二重課税が生じかねないという点です。

わが国は、租税法律主義を採用していますから、「新たな国際課税ルール」が国会で通過して、はじめて法令です(統一的なルールがなければ、法令すらできないわけですから、今回OECDが発表した内容は、その意味でもルールの根幹を成することになるのでしょう)。

2つ目は、わが国の、いわゆるタックス・ヘイブン対策税制と「新たな国際課税ルール」の調和の問題です。現行のタックス・ヘイブン対策税制は、複雑化しています。経済界からは、すでに簡素化を希望する意見が上がっており、財務省を中心とした改正作業の動向が注目されます。法令改正如何によっては、納税者が対応に苦慮する局面が生じるかもしれません。それだけに自ずと関心が高まります。

第2の柱モデル・ルール(英語版)はこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/tax-challenges-arising-from-the-digitalisation-of-the-economy-global-anti-base-erosion-model-rules-pillar-two.htm

概要ペーパ(英語版)はこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/pillar-two-model-rules-in-a-nutshell.pdf

ルールに関する全体のフレームワーク(英語版)はこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/pillar-two-GloBE-rules-fact-sheets.pdf

FAQ(英語版)はこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/pillar-two-model-GloBE-rules-faqs.pdf