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自動的情報交換と税務調査

平成24年度の税制改正により「国外財産調書制度」が創設され、以後、国外に5千万円を超える財産を保有する富裕層は、毎年、日本の税務当局に、その財産の報告義務があります。

他方、当局は、どのような方法で、国外財産を把握し、活用しているのか、今月は、当局による富裕層等の海外資産把握のツールである自動的情報交換と税務調査につ いてのお話しです。

1 情報交換の目的

経済取引のグローバル化が進展する中で、国境を超える取引が恒常的に行われ、資産の保有・運用の形態も複雑化・多様化しています。

租税の賦課徴収を確実に行うためには、国内で入手できる情報だけでなく、国外 にある情報を適切に入手することが重要となります。

国外にある情報を入手するには外国の主権(執行管轄権)により制約を受けることから、我が国を含め、各国の税務当局は租税条約等に基づき租税に関する情報を互いに提供する仕組み(情報交換)を設け、国際的な脱税及び租税回避に対処しています。

2 情報交換の形態

情報交換には、次の形態があります。

  1. 要請に基づく情報交換
    課税当局が調査において課税上の問題点を把握した場合に、その問題に関連する情報の提供を求めるもの
  2. 自発的情報交換
    課税当局が調査において外国における課税上の問題点を把握した場合に、その問題を提供するもの
  3. 自動的情報交換
    課税当局が法定調書等から情報を収集し、大量に情報を提供するもの

3 自動的情報交換の対象となる金融機関等と口座情報

自動的情報交換とは、課税当局が金融機関等の法定調書等から情報を収集し、相互に、情報を提供するものですが、各国は、OECD 租税委員会が公表している共通報 告基準(CRS:CommonReportingStandard)を適用し、情報の交換を行っています。

自動的情報交換の対象となる金融機関等と口座情報等は次とおりです。

➢金融機関等
 ➀銀行等の預金機関
 ➁生命保険会社等の特定保険会社
 ➂証券会社等の保管機関
 ➃信託等の投資事業体
➢対象となる口座
 ➀預金口座
 ➁キャッシュバリュー保険契約・年金契約
 ➂証券口座
 ➃信託受益権等の投資持分
➢口座情報
 ➀口座保有者の氏名・住所
 ➁納税者番号
 ➂口座残高
 ➃利子・配当等の年間受取総額等

(注)共通報告基準とは
共通報告基準とは自動的情報交換の対象となる非居住者(個人・法人等)の口座の特定方法や情報の範囲等を各国で共通化する国際基準です。

4 国外財産の申告もれと税務調査

課税当局は、自動的情報交換により提供された口座情報と国外財産調書を照合することにより、国外財産の申告もれを把握し、富裕層の税務調査の端緒資料として活用しています。