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切出PLの重要性
一般的に調査官は、日本親会社と外国子会社との間の利益配分のバランスを重要視するため、切出PLは非常に重要な資料の一つです。調査官はまず外国子会社のうち利益率が高い拠点をいくつか選定し、それぞれの拠点の利益配分を確認します。しかし、日本親会社の損益計算書は、当然ながら全世界の外国子会社との取引を含んだものです。特定の外国子会社との間でどのような利益配分になっているかを判断するには、日本親会社の損益計算書のうち、その外国子会社との取引に関係する部分の損益計算書を作成し、これと外国子会社の損益計算書を見比べて、利益配分について確認することとなります。その損益計算書を切出PLと呼んでいます。
原則として、移転価格税制では個々の取引単位で移転価格の問題がないかを判断すべきとされています。したがって、原則的には、すべての移転価格調査や分析において、個々の取引単位の切出PLを基礎とすべきです。この意味で、切出PLの作成は「問題の特定」のための作業です。しかし、切出PL作成の手間や正確性を考慮して、課税上の弊害がないことを前提に、ある程度の取引をまとめて検証することも実務では多く行われます。実際に切出PLを作成するのは、部門別および地域別の切出PLが多いと思われますが、どのように切出PLを求められるかは個々の移転価格調査によって変わってくるでしょう。切出PLでは必ずしも日本親会社を切出すのではなく、外国子会社の損益計算書を対象とすることも当然ながらあります。
切出PLにより外国子会社との間の利益配分に問題がないと判断されると、所得移転の蓋然性はないとして初期の段階で移転価格調査が終了する場合もあります。例えば、外国子会社が日本親会社と行う取引と第三者と行う取引の2種類を行っているとして、その全体利益を見ると利益率が非常に高くなっていたとします。国外関連取引のみの切出PLを作成したところ、外国子会社側でそれほど利益が計上されていない場合には、外国子会社は第三者向け取引で利益を確保していると考えられるため、関連者間の取引について移転価格の問題はないだろう、と判断される場合が挙げられます。また、対象となる取引の切出PLをそれぞれ見たところ、日本親会社も外国子会社も損失であればその損失負担関係に特に問題はないだろうと判断されることも考えられるかもしれません。
非常に単純なことですが、移転価格調査で詳しく確認が必要になる点をピックアップする作業の中で、外国子会社との利益配分は大きな材料になります。それは言い換えれば、切出PLの見せ方次第で、以後の調査対象が変わってくる可能性があるということです。事実を曲げてしまうことは問題がありますが、不必要な部分まで詳細に切出PLに表現することによって、別の移転価格の問題が浮かび上がる可能性も考慮する必要があります。切出PLを提出する前には、そのような弊害がないか入念に確認する必要があります。
(取引単位☞措通66の4(4)-1)
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