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各国移転価格NEWS~アルゼンチン~

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アルゼンチンは、南米諸国のなかでも急速に移転価格制度の整備が行われている国の一つです。移転価格文書化についても、OECDBEPS 行動13の基準に沿って国別報告書の導入が実現し、2018年終わりにはマスターファイルやローカルファイルに係る法令も、アルゼンチン税務当局(AFIP)により公表されました。

アルゼンチンでは、20179月に発行された官報で、Resolution N4130-Eとして国別報告書要求が公表されました。同規則はOECD基準に沿ったもので、2017年度以降の事業年度に対して有効である旨記されています。国別報告書の提出義務は、アルゼンチンに居住する多国籍企業の究極の親会社に適用されます。ただし、①究極の親会社が居住する税務管轄区で、国別報告書規則に従う義務がない場合、②究極の親会社の税務管轄区と国別報告書の交換に関する権限ある当局間の合意(CAA)がない場合、③究極の親会社の税務管轄区が、AFIPに国別報告書を提出しようとした際にシステムエラーが生じた場合は、アルゼンチン国内の多国籍企業の納税者にも適用されます。

他に、国別報告書については、次のように規定されています。

  • 国別報告書の提出を要する納税者は、AFIPのWEBサイト上のフォームF8097を使用して提出する。国別報告書の提出期限は、究極の親会社の事業年度終了の日から12か月となる営業日である。
  • 究極の親会社や多国籍企業の情報の提出を要する居住事業者の提出期限は、事業年度終了の日から3か月となる営業日である。なお、国別報告書が究極の親会社の税務管轄区で提出された場合は、提出後2か月以内に、アルゼンチンの事業社がAFIPに知らせる義務を負う。また、国内事業社は、AFIPのウェブサイト上のフォームF8096を使用して提出する。

上記の国別報告書要求が公表された後、2017年12月に、アルゼンチン財務省(Ministerio de Hacienda)により、包括的な税制改革となる法令1112/1017が発行されました。同法令には次の通り、新しい移転価格規則が含まれています。

Intermediary substance test

輸出入の際、国外仲介者が取引にかかわっている場合、アルゼンチンの納税者は、仲介者に支払う報酬が、その取引に係る機能、使用する資産、負担するリスクに見合ったものであることを示す必要がある。同規則は、1)仲介者がアルゼンチン納税者の関連者である場合、2)取引先の海外の相手がアルゼンチンの納税者の関連者である場合に、適用される。

Sixth method

これまで「6番目の方法(Sixth method)」といわれてきた方法では、ある商品の輸出取引は、出荷日の日付で価格を決めることが義務付けられていた。新規則のもとでは、国外仲介者がかかわっているときは、アルゼンチン納税者は、AFIPに対して、取引商品の価格や状態を記した同意書を登録する必要がある。登録がない場合には、取引価格は出荷日の価格に基づいて決定される。

Low Tax Jurisdictions

移転価格規則は、関連者取引に当てはまるだけでなく、取引相手が‘非協力的’な税務管轄区に居住している場合の取引にも適用される。新規則は‘Low Tax Jurisdictions’ の考えを取り入れ、これらの税務管轄区にある相手との取引についても移転価格調査の対象とする。

APAs

事前確認制度(APAs)の実施に関する規則の第一歩として、「税務手続法」に新たな項目が加えられた。AFIPとのユニラテラルAPAsに関する規則を含む。

国別報告書に係るペナルティ

以下の場合ペナルティが課せられる。

― 国別報告書を提出しなかった場合―600,000-900,000アルゼンチンドルの罰金
― 国別報告書の届出をしなかった場合―80,000-200,000アルゼンチンドルの罰金

※ 届出は、事業年度の最終日から3か月となる営業日以内に、また、国別報告書が親会社の居住税務管轄区に提出された場合は、2回目の届出は、国別報告書の提出後2か月となる営業日以内に、それぞれAFIPのWEBサイトを通じて行う。

移転価格遵守基準

新税法において、移転価格申告や移転価格報告といった一般的な移転価格の提出に係る基準の決定権限は、国税局にある。

新移転価格法は、国際取引上の課税における透明性を示し、価格規則を調整していくための重要なステップでしょう。しかしながら、新税法の規則の中には、さらなるガイダンスを必要とするものも含まれていました。2018年11月には国別報告書要件や移転価格の規則に新たな規則General Resolution No.4332が示されました。そこでは、多国籍企業の事業者が、国別報告書を提出する義務のある国の税務上居住者であり、また、その国はアルゼンチンと情報交換の当局間合意を結んでいる場合の規則や、国別報告書を提出するための「ユーザーマニュアル」の更新が含まれています。

続く2018年12月、AFIPは、ウェブサイト上に、国別報告書および提出義務についてのQ&Aを掲載し、さらに明確な説明を発表しました。アルゼンチンの移転価格規則Resolution N゜4130および修正規則Resolution N゜4332は、OECDガイドラインに沿ったものである一方で、これらの規則で使われている文言は、内容が不明確であるとの懸念が生じていたことも否めなかったでしょう。AFIPによる今回のQ&Aにより、こうした懸念が払拭されたともいえるでしょう。国別報告書の提出につては、AFIPが協定を結んでいる国々を把握しおくことは重要でしょう。
※リストはAFIPのウェブサイトで確認でき、国別報告書の二次的提出が適用される場合のガイドラインを確認できる。

2019年に公表された法令1170/2018には、マスターファイルやローカルファイルの導入についても含まれ、移転価格税制についての、さらなる広範囲にわたるガイドラインを提示しています。アルゼンチンの移転価格に係る税制は、この数年で急激に整備されつつあるといえるでしょう。今後は、移転価格の遵守等に関してもガイドラインが規定され、ますます整備は進むと見込まれます。