「デジタル経済下における国際課税研究会」が中間報告書を公表 | 移転価格.com | 国際税務専門の税理士事務所|信成国際税理士法人
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OECDが、1月20日、最新となる2022年「OECD移転価格ガイドライン」(英語・仏語版)の公表・販売

OECDは、2017年、2017年版「OECD移転価格ガイドライン」(以下、TPGと表記します。)を公表と同時に、「取引単位利益分割法」(以下、PS法と表記します。)を中心として、見直しをはかるとしていました。

2018 年6月には、その成果物として、「Revised Guidance on the Application of the Transactional Profit Split Method」を公表していました。今回、販売された2022年版TPGは、それらの内容が取り込まれたものとなっています。

解説

2022年版は2017年版と何が違うのか

TPGの2017年版では、BEPSプロジェクトの成果物が取り込まれました。主として、BEPSプロジェクNo.8~No.10の「2015年最終報告書~移転価格税制と価値創造の一致」の内容、すなわち無形資産に関する事項でした。

2017年版のTPGをご覧になった方は、驚かれたことでしょう。なぜなら、第二章の「C 取引単位利益分割法」の部分が、10数頁にわたり黒い網掛けになっていたからです。そして、枠取りされた箇所に、次のように記載されていたからです。

現在、第6作業部会では利益分割法の適用について検討されており、本節及び第2章別添Ⅱ・Ⅲの指針は、そこでの結論を受けて改訂予定である。この検討は、BEPS行動計画 10に基づくものであり、グローバルバリューチェーンの文脈において利益分割法、特に取引単位利益分割法の適用を明確化することを目的としている。

OECDは、2018 年6月、検討を行った内容として、「Revised Guidance on the Application of the Transactional Profit Split Method」を公表しました。 公表された物(英文)は、44頁に及び、また、16の設例が示されてもいました。また、PSの利用については、大きく3つのメルクマールを示していました。

  1. 各関連者によるユニークで価値ある貢献(unique and valuable contributions by each of the parties to the transaction)
  2. 高度に統合された事業活動(highly integrated business operations)
  3. 経済的に重要なリスクの引き受けのシェア、密接に関連したリスクの個別の引き受け(shared assumption of economically significant risks,separate assumption of closely related risks)

今回、2022年版には、こうした内容が盛り込まれたものとなっています。

わが国におけるTPGの扱い

国税庁は、わが国の移転価格税制に関する通達の1つとして、「移転価格事務運営要領(指針)」を発遣しています。

そこでは「基本方針」として、次のとおり述べています。

1-2 移転価格税制に係る事務については、この税制が独立企業原則に基づいていることに配意し、適正に行っていく必要がある。このため、次に掲げる基本方針に従って当該事務を運営する。

(1)及び(2) 省略

(3) 移転価格税制に基づく課税により生じた国際的な二重課税の解決には、移転価格に関する各国税務当局による共通の認識が重要であることから、調査又は事前確認審査に当たっては、必要に応じOECD移転価格ガイドラインを参考にし、適切な執行に努める

(注) 下線は、筆者。

ポイントは、TPGは、各税務当局の共通の認識であり、わが国の調査や事前確認審査においては、調査担当者が、TPGを参考にしながら、適切な税務執行に当たるということになっている点です。

そのため、少なくともTPGが、どのような内容なのか、税務当局ばかりか納税者も了知している必要があるでしょう。その意味では、2022年版が世に発売されたことは、歓迎すべきことと言えます。

今後の課題

現在、2022年版TPGは、英語・フランス語のみの公表・発売となっています。移転価格の問題は、日本においてもきわめて関心が高く、また、2022年版では、今日問題となっているグローバルバリューチェーン、すなわち、無形資産と密接に関係する事項を扱っています。

それだけに、2017年の日本語版が国税庁のホームページに掲載されたように、2022年版についても、日本語版が、同様に掲載され、納税者が手軽に利用できることが望まれます。

税務当局と納税者が、情報の点において同一の環境下にあることが、納税者のタックス・コンプライアンスの維持・向上の観点からも、求められもするからです。

2022年版TPGに関するOECDのサイト☞
https://www.oecd.org/tax/oecd-releases-latest-edition-of-the-transfer-pricing-guidelines-for-multinational-enterprises-and-tax-administrations.htm

OECD、2018 年6月公表「Revised Guidance on the Application of the Transactional Profit Split Method」はこちら☞
https://www.oecd.org/tax/beps/revised-guidance-on-the-application-of-the-transactional-profit-split-method-beps-action-10.pdf

国税庁ホームページ2017年版「OECD移転価格ガイドライン」(日本語仮訳)はこちら☞ https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/oecd/tp/pdf/2017translated.pdf