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ロイヤルティ料率算定にあたってのポイント

実際にロイヤルティ料率を決定するに当たり、懸念となる点がいくつかあります。まず、ロイヤルティ料率を上げようとする場合に起きる海外側での抵抗です。例えば、中国子会社から回収する2%のロイヤルティでは日本の税務当局に指摘されそうな場合、これを4%に上げようとして中国子会社と合意をしたとしても、中国の税務当局の抵抗にあうことが予想されます。今まで2%だったロイヤルティを4%に上げる根拠について説明を要しますが、超過利益の回収という理由だけでは中国の税務当局には通用しないかもしれません。中国の税務当局は、超過利益が中国に帰属するものという考えでいるでしょうから、料率を上げる理由にならず、上がった2%部分の送金は認めないという対応をすることも有り得ます。日本では移転価格課税リスクを下げるためにロイヤルティ料率を上げたのですが、その分の送金は受けられない、という状況に陥るケースが見られます。

画像 (図表1-26) ロイヤルティ料率算定にあたってのポイント

また、ロイヤルティの支払に際し、源泉税を課す国があります。先の中国も日中租税条約により使用料に10%の源泉税を課すことになっています。つまり、100のロイヤルティを回収するために10の源泉税が必要になります。この源泉税は、外国での所得に対して支払った税であるため、通常日本の法人税の計算において外国税額控除の適用が可能です。ロイヤルティに源泉税がかかり、そのロイヤルティにさらに日本の法人税がかかるという二重課税は、この外国税額控除で解消することが可能です。しかし、外国税額控除には、控除限度額があります。これは、二重課税になった部分、つまり、日本で課税所得として認識した中で、国外で生じた所得(国外源泉所得)にかかる法人税が限度になります。したがって、業績悪化により法人税が出ない場合は外国税額控除ができません。3年間の繰越控除がありますが、3年連続して業績が悪ければ控除機会を失います。この場合、源泉税は払っただけ、損金にもならず、控除もできないことになります。逆にみなし外国税額控除という制度もあります。これは新興国への投資促進のため、実際に払った源泉税にかかわらず、一定の源泉税率までは支払ったものとみなして日本の法人税で控除できる制度です。実際に支払った10%の源泉税に対し20%支払ったとみなして日本で20%分引きましょう、という具合です。この場合、源泉税は支払うだけ控除のメリットが大きくなります。このように、ロイヤルティを徴収することに付随する費用も考慮しておく必要があります。

このようにそれぞれの国の事情や二国間租税条約の内容を考慮し、それぞれの外国子会社と無形資産使用許諾契約を結ぶのですが、これを一つにまとめて解決する方法としてコストシェアリング(費用分担契約)という方法もあります。例えば、研究開発費用10億円について、ベトナムの会社に1億円、中国の会社に2億円と負担割合を決めてしまいます。その研究開発により生じた製品の販売収益についても、同じように帰属割合を決めて割り振ります。実現すればきれいに整理ができる方法ではありますが、新興国ではコストシェアリングという概念自体がまだ浸透していない状況です。新興国の税務当局としては、企業が決めたよくわからない基準で自国企業に費用負担を求められても損金として認められない場合もあり、コストシェアリング契約の実現は敷居が高いというのが現状です。
(外国税額の控除☞法法69)